西が丘高校占い研究会(仮)の奮戦 ②
翌日。
購買のパンとコーヒー牛乳を両手に、屋上に行くと、生徒会長、
文妻の姿に気がつくと笑顔で軽く手を振る。
「遅かったな、
「ちっとばかり、授業が延びたもんでな。しかし、珍しいな」
「たまにはよかろう」
少しも女の子らしくない、特大サイズのアルマイトの四角い弁当箱、いわゆるドカ弁を広げた忍は、唐揚げをつまんでもむもむと食べだした。
手元のカレーパンの袋を開けかけたまま、文妻はついその弁当箱を覗き込む。
「ん? どうした、欲しいのか唐揚げ」
と、忍は新たな一つを箸でつまんで、ずい、と差し出す。
「あ、いや、まぁ、確かに美味そうだが……なんつーか、すごい弁当箱だな」
文妻の感想を聞くと、忍は少し眉根を寄せて、差し出していた唐揚げをほおばった。むしゃむしゃごくん、と飲み込んで口を開く。
「実用、という点ではこれで十分だぞ。量も入るし。何かと多忙だから、ご飯はしっかりと食べないと体がもたない」
「なりは小さいのにな」
と、つい口を吐いて言ってしまい、その後で、そう言えばネズミはひっきりなしに食べてないと死んじゃうんだっけ、などと思考を飛ばしたところで、隣からの険悪な視線に気がついた。
「何か失礼なことを言って、さらに失礼なことを考えてはいなかったか? 京司郎」
「あ? あぁ、いや」
ごまかすように言葉を濁して、カレーパンをほおばる。
「……これでも少しは気にしてるんだぞ」
ぼそりと呟いた忍はこれ見よがしに、パックの牛乳をストローで飲む。
「あぁ、悪かったって」
少々ばつが悪くなった文妻は、話題を転換しようと思って昨日の由比香との一件を思い出した。
「そういや、占い研究会の宮川に酷いこと言ったそうじゃないか」
ストローを口に含んだまま、思案顔になる忍。ややあって、思い出したらしく、空にしたパックをわきに置いて口を開いた。
「あぁ、学園祭前に一度呼び出したことがあったな。京司郎がらみで」
「その辺の話は聞いた」
「ふむ、だが、何か失礼なことを言ったかな。記憶にないんだが」
考えながら唐揚げをつまみ、二本目の牛乳パックにストローをさす。
「なんでも、オカ研か、超常研にでも入ったらどうかとか言われたって」
唐揚げをほおばりながら、思い出したようにうなずく忍。
「うむ、確かにそんなことを言ったな。まぁ、真剣に部活を設立しようと考えてる相手にそんなことを言ったのは確かに失礼だった」
言い終えて、また牛乳パックのストローに吸いつく忍。
「まぁ、そればかりじゃなくてな。宮川は一応占いを真剣に科学的だと思ってるわけなんで、それをオカルトやら超常現象と一緒にされたんじゃたまらんだろう」
「なるほど、それもそうだな。気が付かなかったとは言え、ずいぶんと失礼をしてしまったようだ」
二本目の牛乳パックも空にして、忍はまた弁当に手をつける。
「しかし京司郎、またなぜ突然そんな話になったのだ? 確か以前、宮川から占われることを拒否したとか、提出された報告にはあった気がするのだが」
「部員を三名集められたら、設立を認可するといったらしいな」
「うむ、ってまさか」
忍の柳眉が少し危険な角度につりあがる。
「待て待て。部員集めに駆り出されただけで、それ以上のことをするつもりはない。第一、俺は占いが嫌いだからな」
いささか険悪な視線を送りこみつつ、忍は食べ終えた弁当箱をしまい、三本目の牛乳パックにストローをさす。
「まぁ、京司郎がどんな面倒事に首を突っ込もうが、私の知ったことではないが、しかし、普通は占い嫌いの人間にそんなことを頼もうとは思わんだろう」
言い終えて、一息に吸いきる忍。
「まぁ、普通はな。なんでも人脈を当てにされてるんだそうだが、自分で占いをやる人間となるとなぁ……。って、おまえ何本飲むつもりだ」
「ん?」
文妻は呆れた表情で見やった先には、四本目の牛乳パックにさしたストローをくわえてきょとんとする忍の姿があった。
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