西が丘高校生徒会の非日常 ~或いは文妻VS生徒会長~ ⑥
さて一方、会長は会長で、後夜祭エキシビジョンイベントについて、学園祭実行委員長へと捻じ込みに出かけていた。
「困るんですよねぇ。学園祭まであと一月切ってるんですよ? ここでエキシビジョンを増やせと言われても」
渋面で会長の提案(思いつき)に苦情を申し立てたのは、学園祭実行委員長、
「予算も時間割も、既に決まってんですよ。今更変更となるとなぁ」
「そこを枉げて、と言ってるのだ。仔細は任せる。予算が必要なら多少は都合する」
こうなれば梃子でも動かない性格は既に周知の事実である。鷲津はあからさまに大きな溜息をついて、要求を飲むことにした。
「わかりましたよ。予算はなんとかします。そもそも、会長の趣味で変更されるイベントに追加予算発給じゃ職権濫用ってもんでしょう」
「ん、まぁ、それはそうだな」
珍しく会長から一本とって、鷲津は多少気分が良くなった。
「それで、どんなものを用意しろと仰せですか?」
「うむ、仔細は任せる。とにかく、出来るだけ人目を引いて、勝敗がはっきりつくイベントをお願いしたい。賞品の提供は生徒会が責任を持って行なう」
「ふむ」
そもそも、この手のイベントの企画が好きで、中学の頃から学園祭やら文化祭やらの実行委員を務めてきた鷲津である。そのリムレスの眼鏡の奥で、瞳がきらっと輝いた。
「いいでしょう。ただし、仔細は任せると言った以上、この件については口出しは一切無用に願いますが、それでよろしいですか?」
喜色満面で会長は頷いた。
「うむうむ、それで構わんとも。そもそも、執行部も競技者として参加するつもりだからな」
「なるほど」
既に鷲津の頭の中ではイベントの組み立てが始まっている。
「では、任せていただきましょう」
眼鏡の奥で鷲津の瞳の輝きが増したことに会長は気がつかなかった。
かくして、噂は学校中を駆け巡ることとなった。理由も方法もわからないが、『皇帝』の二つ名を持つ会長と、『部活ジプシー』文妻が、学園祭最終日に対決を行なうと。
学内マスコミ三団体である、報道研、新聞部、放送部はそれぞれ、熾烈な取材合戦を繰り広げたが、会長と文妻は強気なだけで内容に乏しいコメントしか返さず、主催である学園祭実行委員会は、ノーコメントを繰り返すばかりで全く記事にもニュースにもならない。結局は無責任な噂ばかりが先行し、一部非合法に、勝敗のみならず対決方法までが賭けの対象になる有様である。しかしながら、学園祭の準備自体は、奇妙なまでの活気を帯びて、例年以上に盛り上がること確実、との前評判が立つまでになった。これも、実行委員長鷲津の手腕によるところが大きいと思われる。
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