第173話許さない

許さない

【許さない】


「・・・純・・・ごめんね」抱きしめたまま

「・・・不安にさせて、俺がもっとしっかりして信用できる人間になっていれば、そんな事言われても平気だったろうに、まさか、そんな事言われてたなんて、純、そんな事ありえないからね、 純がいるのに、そんな事する訳ない・・・

あのね、洋子さんには純と一緒の時以外会ってないよ」

「・・・でも・・・洋子さんと親しげにって」

「純、なんであいつが洋子さんの事を知ってるの? 洋子さんとあいつって会った事ないよね、純が言ったんじゃない?」

「・・・うん・・・」

「純、あのね、俺が純にあいつは怪しいって言ってから、ずーっと純と一緒だよ、そんな時間ないね、洋子さんとはいつも2人で会ってるじゃない。

ねっ、一緒に住んでるんだから、ずーっと純と一緒なんだから、他の人とラブホに行ってるような時間なんかない、ラブホに行ったのは、この前純と行っただけ、それを見られたかも・・・」

「・・・うん・・・」

「だいたい、洋子さんが純を裏切って俺を誘う?うそだよ、純、あいつの罠だよ」

「・・・かっちゃん」

「純」

「うェ~ん」泣きながら俺にしがみついて

「つらかったよ~ 洋子さんとなんてイヤだ~」

「ごめんね、うん、そうだね、つらかったよね

そっか~ そんな事言われたんだ、心配だったよね、イヤだったよね、ごめんね」

抱きしめて、頭を撫でながら、慰める。

純が落ち着いてきたので、

「俺ね、純を見て、純があいつに何かされたのか、2人の間で何かあったのか、またこの前みたいに俺のいる場所がなくなったのかって、心配で、だから必死だった」

「ううん そんな事ないよ、絶対そんな事ない かっちゃんだけだもの」

「うん、あせったよ、心配だった、でも、あいつそんなウソ言ったんだ」

「うん、それ聞いた時思わず洋子さんの事、思い出しちゃって、口に出して言っちゃったの」

「そっか、あいつはそれに乗ったんだ、純はちょと失敗したね」

「ごめんなさい」

「いいよ、俺こそごめんね、もっと純に信用されるようにがんばらないとね、それにしてもこんなこと・・そんなウソまで言って、絶対許さない」

「うん」

「あいつは俺達が一緒に住んでる事、知らないんだ、会社以外でもいつも一緒なのにね、だからそんな嘘言ったんだよ。

普通、彼氏に『他の女の人とラブホに行った?』なんて、なかなか聞けないよね。

もし、聞いたとしても、行っても行かなくても答えは『行ってない』だろ?

どっちにしても、彼女はますます不安になる。

だから、あいつ それを狙ったんだ。」

「うん」

「俺達は、1度ひどい目にあってるから、お互いにちゃんと聞ける・・・よね?

それに一緒に住んでるから、そんなこと不可能だろ?」

「うん、大丈夫だよ、ちゃんとかっちゃんに言う」

「純、俺達が一緒に住んでる事は皆には秘密にしておこう、同じ区だからと思って住民票移してなかったんだけど、どこかで調べたんだろうな、それが良かったんだ、きっとまた何か言ってくる、俺達の仲を引き裂くような嘘を、それで純を不安がらせて、そして相談に乗るとか言って何かする気なんだ、だから一緒に住んでる事がわかると予測がつかないような事をやってくるかもしれない、だからねっ」

抱きしめて、頭をなでながら

「相談に乗るよ、とか言って近づいてきたら、武村に相談してるからって断れる?

 武村の名前をだせば、引き下がると思うんだ、社長の息子で純の幼馴染だしね、でも、また何か言ってくるかもしれないけど、武村にもその事を言っておこう」

「うん、わかった、でも、うそ、とわかっても洋子さんとラブホって思ったら・・・もう、どうしようって不安になっちゃって・・・」

「でも洋子さんはそういう人じゃないってわかってるだろ?」

「うん、わかってる、そんな事する人じゃないって、でも、洋子さん、私より魅力的だから・・・だからそう言われると・・・かっちゃんは私より洋子さんの方がって・・・」

「そうだよね、わかっててもそういうこと言われると 不安になるよね、 あいつはそういう事を狙って、平気でそんなウソ言ってくるんだよ。本当に気を付けないとまずいね」

「うん、かっちゃん、愛してるよ、私はかっちゃんだけ、かっちゃんだけだよ」

「うん、純、愛してるよ、大丈夫、俺も純だけだよ」

 そう言うと、そのままベッドに・・・何度も愛し合って、そして、あのいつもの一番大好きな俺しか知らないかわいい顔に。

純の寝顔を見ながら、明日の事を考える、あいつは、また何かするかもしれない、とりあえず武村にその後どうなってるか聞こう、 

そして、純がまた仕事とか言って遅くなっても俺はそのまま会社に残る、それを阻止されたらスタバで待つ。

 純があいつと2人きりになる時、スマホを俺にマイク通話でつなげること、そして、RINEや連絡先を教えないといけない事があるかもしれないから、それ以外にも何かあるといけないからダミー用にもう1台スマホを買うことにした。

 この話を武村に言うと、怒りまくって、徹底的に調べると言ってくれた。

いずれあいつの会社になるから、その時に、そういう奴がいるのは会社の毒だ、って。

ほんとに助かる。

俺もこのままじゃいられない、ただやり方を間違えると会社内での立場があるから、どうしようもなくなったら、その時は、最悪2人で会社を辞めるしかない。

そうなると武村の手伝いができなくなるけど、その時はゴメン、俺は純を最優先するよ。

うまくやらなければ・・・。

とりあえず、明日も仕事だ、純といっしょに考えようと思って寝ようとするけれど、やっぱりなかなかねむれない。

うとうとしている内に朝になり、ぼーっとしたまま会社に出かけた。

 午前中、どうしても純が気になる。

ちらちら見てしまう。

水野さんが「高谷君って村井さんの婚約者なんでしょ?」 「はい」

「あの須藤主任は、気を付けた方が良いわよ」

「やっぱり、そうですか」

「なにかあったの?」

「ええ、実は・・・」概略だけど話をすると

「あら、そう、もうそんな事しているのね、それはまずいわね、ほんと気を付けた方が良いわよ」

「何かあったんですか」

水野さんは20年以上前だけど、高卒で武村建設に入社し、経理の仕事を中心に忙しいときは総務、業務の仕事をしていた、工事部の水野部長と社内恋愛の末結婚し出産により1度寿退社をしたが、子供が大きくなってから、パートとしてここに戻って働いている。

昔のまだ会社が小さかったからころからの人で、この会社の事をよくわかっており、業務部の仕事もできるので会社としてもずーっと働いてほしいと皆から言われているような人だ。

当然社長も元社長夫人も武村も顔を見れば話しをするくらい昔からの知り合いらしい。

「あの人、総務の新入社員の子に手をつけてね、その時別の子とつきあってたんだけど、その子が妊娠したとかで 修羅場になってね、結局その子は退職して本当の事はわからなかったのよ、でもその後も新人の女子社員が結構辞めて、最初は気がつかなかったんだけど、ある時に 今の総務課長が2人でラブホに入っていくところを何回も見てね、でも、そういうのって一応プライベートだし、恋愛事だからね、その子が辞めた後も、ちょっとかわいい子が入ってくると、1年もしないうちに辞めちゃって、なんか須藤主任と2人で夜の繁華街をいっしょにいるのを見かけるとおかしくなるのよ 」

「そういうのって会社では何もできないんですか」

「そうね、はっきりその子から会社に訴えてこない限りはね、会社でも、女の子が自己都合で辞めるだけだから何もできないんだけど、部長も総務課長も気づいているんだけどなにもできないのよ」

「だから、おそらく村井さんも狙われてるわね、 私も気を付けて見ておくけど、あなたも気を付けた方が良いわよ」

「はいそうします。ありがとうございます」

完全にあいつはアウトだった

その話を純にもして、最優先で要注意として覚悟した。


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