第143話平穏ではない学生生活-10

平穏ではない学生生活-10

平穏ではない学生生活-10


約束の時間に純はカフェで待っていると、あいつがカフェに。

純を見つけるとさわやかイケメンスマイルで純に手を振る。

「やあ、待った?」

「いえ、私もついさっき来たところです」

「そっか」あいつは思いっきりうれしそうな顔で純に話しかける。

紅茶を注文し、ニッコリ

「純ちゃん、ようやく本心を言う決心がついたんだね、だから今日は彼がいないんだ、うん、そうか」自分で納得しながら、自分に言い聞かせるように、満足気に。

「ハイ、避けているだけじゃあ前に進まないので、ちゃんと本心を言わないといけないと思い、約束して今日ここに着てもらいました」

「うん、わかってる。だから今日は彼氏がいないんだよね、わかるよ、大丈夫僕がついているから」

自信満々にやたらニコニコしながら純に話しかけている。

ほとんど1人で一方的に話している、というか何その自信?

「この後は・・・僕は車で来ているからね、う~んそうだな~横浜でも行って、元町あたりをぶらついてから山下公園で海を見て、夕方にレストランで食事もいいかな~」

完全に自分の世界。・・・気持ち悪い・・・

純が小さい声で(かっちゃん、イヤ、気持ち悪いよ)

聞こえたので、俺は、スマホの画面をツンツツツンと爪でたたいた。

最初に打ち合わせしたわけじゃないけど、俺の声があいつに聞かれるとまずいので、俺はちゃんと純の声が聞こえているよ、となんらかの意思を伝えようと、思いついてやったのだが、きっとわかってくれたんだろう、純があいつに言う。 

「あの、何を言ってるのかわからないのですが、私の心の本当の声を聴きたいんですよね」

「あっ、そうそうごめんね、そうだね、横浜までは結構時間がかかるからね、早い方が良いね、じゃあ純ちゃんの心の声を聴かせてもらおうかな」

純のスマホから聞こえてくるあいつのこの話、殴りたくなってくる。

「どうしたの?ほんとうの声を言っても大丈夫だよ、ちゃんと僕が受け止めてあげるからね」

「私の心の本当の声は」

「うん」

「私は今の彼が好きで好きでしょうがないんです、大好きなんです。

愛してるんです、絶対離れたくないんです。だからじゃましないでほしいんです」

あいつは、目を大きくしたまま、カップを持つ手が固まっている。

「先輩が、こうやってしつこく付き纏ってくるのが、イヤなんです。迷惑なんです。気持ち悪いんです」

あいつの目つきがだんだん険しくなって

「純ちゃん、何を言ってるんだい?」

「私の心の本当の声です。先輩がこうやってしつこく付き纏って、それで、もし彼との関係がおかしくなって、もし壊れたら・・・・・・」

純が涙ぐんで、

「絶対許しません、私は先輩を一生恨み続けます。私ができる事全てを使って先輩が地獄に落ちるまで、一生かけて復讐します」

「……」

「だから、もうこれ以上私に付きまとわないでください」

ここまで言われて平気な奴はいないと思う。

俺はそれ以上に純の強い意思、気持ちを聞いて、感動してしまった。

ますます好きになっていく、愛おしい、守らなきゃ。

純がここまで言ってくれたんだ。

このままあいつを帰すわけにはいかない。俺もあいつに言わなきゃいけない

息の根を止めてやる。そう思った、覚悟した。

あいつがカフェを出てきた時に捕まえる。

そう普通の男ならそれを聞いて・・・なのに、あいつは、それでも余裕のある態度で純に話しかける

「まあまあ、そんな深刻な顔なんかしないで、ねっ」

間髪いれず「本気です」

きっとにらみつけてるんだろう。

今、すぐにでもカフェに乗り込んであいつの前に立って言いたいけど、純が1人で頑張っている、俺はぐーっと我慢。

「そうか、うん、そうなんだね、今、純ちゃんは彼が好きなんだね、わかった。

でも、僕たちはもう友達だからね、これからは先輩として純ちゃんに何かあったら相談に乗るから、これからは友達として、気軽に話しかけてよ、僕も純ちゃんの友達として声をかけるから、だから時々こうしてお話しよう、ね」

「違います、友達じゃありません。もう私に関わらないでください」

・・・・・・

「まあ、そんなに根詰めないで、ね、今はちょっと興奮しているみたいだから、もう少し落ち着いてきたら、ね、大丈夫だから」

「あの、私の言っている事がわかりますか?興奮しているからじゃなくて、本当に私達に関わらないでほしいんです。わかりませんか?」




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