第39話静かな学校生活 -文化祭1/4

静かな学校生活 -文化祭1/4


純と付き合い、純があいつと別れたい―――と回りに言ってから、もう1ヶ月以上たっている。


あいつの耳にその噂は入っているはずなのに、あいつからの動きはない。


夏休みは大学の合宿に一緒に行き、学校が始まってからも推薦先の大学の練習に参加していると聞いたので、おそらくそっちを優先しているだろうけど、自分の物だからと慢心しているのか。


まあ、あんな事をするような奴だから、所有物くらいに思っているんだろう。


ずーっと気になってるんだけど、そうしているうちに文化祭がやってくる。


去年の文化祭・・・記憶にないというか参加しなかった。


文化祭の時は出席とらないから、学校に行く振りをしてバイクで遊んでた。


片道50kmくらいの普段は行かない郊外にある有名な公園とか、予備校もさぼったけど、純に去年は何してたか聞かれたので、この事を話したら、絶対に学校にいてほしいと言われた。


でも学校ではほとんど話はできないと言ったら、それでも近くで見ていたいからと言われ、まあ、今年は武村もいるし、バイクはやめて、文化祭に参加しようと思う。


文化祭にクラスで何をやるか・・・実行委員が決まって色々な意見が出ているようだけど、結局無難に喫茶店になった。


看板は、純。


そしてクラスの2トップのもう1人トップカーストの竹下さんがメインの接客担当他多数の女子。


カウンターの中や、ときどき接客する男子は・‥‥‥トップカーストの男3人が主導で決める。


あいつらのお気に入りで固められ、俺は裏方。


食材や飲み物を調理室にある冷蔵庫から教室に運ぶ係。


男だけで10人くらいいるから、まあ余り者を寄せ集めただけ、何回か運べばさぼっても問題ない人数。


女子で仲良くなった田代さんや中野さんが、


「高谷君は何の担当?」


「うん、俺、荷物運び 」


「いいな~ 私も一緒にそれやりたい、接客なんて私には無理~」


「ははは」


帰りに、純から同じことを聞かれ、『かっちゃんと一緒にやりたいのに~』と言われたけど、あいつらが決めたことにいちいち逆らう気はないし、楽だからいいや、って。


後夜祭の最後はグラウンドで全校生徒が集まって何かするみたいだけど、純から必ず出るようにって言われたから、本当は久しぶりに1人でこっそり抜け出してバイク・・・・と思っていたのが、夜までいるはめになってしまった。


文化祭当日、俺のクラスの喫茶店は大盛況、


純がいるから、少なくともそういう連中はいるだろうとは思っていたが、1年の男子まで純を見に来るとは思ってもみなかった。


おまけに一緒に写真を、とか言って勝手にスマホをかざすやつらが多くて、でもこういう時、トップカーストの連中が一生懸命止めていた。


いや~、俺の為に止めてくれてありがとう。


俺はたまに荷物運びをしては、ひっそり静まった食堂の前に行ってはコービーパックを買って座っていたら、何度も武村に出くわした。


「あれ?武村、なんでここにいるの?」


「お前は?」


「暇だから」


「そういう事だよ」


「そっか」


「おお」


2人で階段に座って、ぼーっとしながら、コーヒーパックを飲む。


隣を見ると、武村がイチゴミルクを飲んでいたので


「イチゴミルク好きなの?」


「あ?」


「それイチゴミルクだよね」


「・・・・・・恵が好きなんだ」


「ふ~ん」


こんなどうでもいいような意味のない会話をして、「じゃあ行くわ」


「また」


「おお」


のやり取りが1日に数回。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る