第8話高校1年 ー最悪の夏休み2
高校1年 -最悪の夏休み2
男性と2人で、明らかに年上の大学生くらいの感じで、彼女もうっすら化粧をして、見たこともないような女子大生みたいな恰好で、それは俺が知ってる彼女ではなく、いつもより大人びた雰囲気、最初は親戚のお兄さん?と思って声をかけようと後ろから近付いたら……
よく見たら、手は恋人繋ぎ、2人にニコニコしながら話をしてるし、時々彼女は男性の肩に頭をつけたり・・・
俺は声をかけようと思っていたからかなり近づいてしまって、あわてて気づかれないように距離をとろうとした時、2人の話声が聞こえてしまった。
「来週、2人で旅行に行かない? 泊りがけで」
「うん、うれしい、孝さんと2人で旅行ね」
それ以上の会話は耳に入らなかった。
‥‥‥そういう事だったんだ。
部活が忙しいんじゃなくて、彼とのデートが忙しかったんだ。
そのまま何も買わず家に帰って、何もできず‥‥‥。
次の日、約束の時間に約束の場所に行くと、いつもの彼女が既に待っていた。
化粧もしていないし大人びた服装でもない、いつも見る彼女、昨日見た彼女とは違う・・・
どことなくぎこちない2人、・・・きっと今日振られる‥‥‥
どこでも良いから、という気分で、待ち合わせ場所から見えるカフェ、
「そこに入ろうか」
「うん」
2人ともほとんど何もしゃべらないで、一番奥の席に座った。
振られるのがわかっているので、コーヒーだけを頼み、彼女も紅茶だけ頼む。
少しでも早くこの場を去りたい、そんな思いの中、店員さんが向こうに行ったので、
俺から話かけ
「久しぶり、2ヶ月?くらい?」
「うん、そうだね」
「今日は何か話があるんでしょ?」
俺から振られるのを誘導している。
「うん」
彼女がなかなか話さない、どうしようか、俺が昨日見た彼の話をした方が良いのか、
でも一応は付き合ってた彼女だから、俺が浮気を発見して問い詰めるよりは、ちゃんと彼女の口から言わせてあげよう、そう思って、こっちもじーっとして
「克己君、あのね、別れてほしいの」
「うん」
「えっ?」
「いいよ」頭の中は怒りまくってるけど、せいいっぱい見栄をはって落ち着いたふりをして答える。
「聞かないの?」
「ああ、どうせ、他に好きな人ができた。とか、そんなんでしょ」
「・・・うん」
「夏休みはその人とデートしたり、旅行したりしてるんでしょ」
「・・・うん」
「話はそれだけ?」
「ごめんなさい」
「別に」
「でも・・・ごめんなさい」
「ほんと、別にいいよ」
「克己君、私の事好きじゃなかったの?」
「えっ、どうして?」
「だって、そんなに簡単に「「いいよ」」って」
「だって他に好きな人ができて、2人でデートしたり旅行に行ったりしてるんでしょ、それを俺が何言おうと、何も変わらないから、あまり無駄な事したくないし」
「ごめんなさい」
「じゃあ、話はこれで終わり?」
「うん」
「じゃあ、あっ、そうだ、1つ教えて? 彼氏は大学生?どこの大学?」
「・・・うん・・・二本澤大学の1年生」
「ふ~ん、そう、お幸せに、じゃあ」
そう言ってコーヒー代として500円玉を置いて1人で出て行く、なんとか彼女に顔を見られないように背中を向け出口へ、結構やばい、泣きそうな顔をしているのは自分でもわかる。
500円玉をテーブルに置いた時、彼女はちょっとびっくりしたけど、すぐにうつむいて申し訳なさそうな雰囲気をしていたが、泣いてはいなかった。
そりゃそうだ、昨日は彼氏と楽しいデートで来週は旅行、一番ネックだった俺がすんなり別れてくれたんだから、泣くことはない、うれしいんだろ、くっそ、ふざけやがって……
すっごくくやしい、思いっきり責めて泣かせてやりたかったけど‥‥‥俺が先に泣きそうだったから、見栄を張って、ものわかりが良い振りして‥‥‥なるべく早く彼女の前から消えたかった。
カフェを出た、かなり急ぎ足で家に向かう、途中から走り出す、ぎりぎり間に合った。
家に帰って自分のベッドにうつ伏せに……涙が一機にあふれ出した。
2時間くらいたった頃、落ち着いてきたので、ふと顔をあげ、何気なく回りを見ると、普通に変わらない自分の部屋があって、普通に自分がそこにいて‥‥‥それだけなんだ……
俺は振られても、周りは変わらないまま・・・父さんも母さんも妹も昨日と同じ何も変わらない・・・俺が振られただけ・・・
そう思うと・・・俺のこの出来事って、小さい事なのかな~。
そう言えば、俺、本当に彼女の事が好きだったんだろうか、なんて考えたりして、振られたショック、彼女が他の男と楽しそうにしている現場を目撃した時のショックをごまかしながら、1人ブツブツとへりくつをこねる。
ぜったいあいつより良い大学に行ってやる。
そしてすっごい美人の彼女を作って見返すんだ、とか。
彼女にふられる前に、別の男といるのを見かけたからショックが大きかったのかな?とか
自然消滅の方がよかったかな~とか、
俺が好きになって告白してつきあってたら、こんなもんじゃないよな~とか。
いろんなことを考えた。
単に自分に言い訳しているだけなんだけど、冷静に考えれば、大好きだった彼女に振られ、それも彼女には新しい彼氏がいて旅行に行くほど深い関係だ、という事。
2人が付き合うこととなったいきさつとかを聞きたい気持ちもあったけど、聞いてもどうしようもないし、だって、定期試験の直前までは頻繁に彼女に会って深い関係だったし……
試験期間からなのか、いつから2股なのか、なんてもうどうでもよかった。
だって、もうあの男とそういう関係にまでなってるんだから、今更俺の元に戻っても・・・イヤだな。
次の日から、もう何もする気が起きなかった、けどかえってよかったかも、だってただ暇な夏休みなんだから。
結局なにもしないで、ただ1日中だらだらと、ネット配信アニメや映画も観るけれど、スマホゲームもするけれど、さんてんどうのゲームはなぜか体力づくりが大半で、おいでよ植物園はいやされるけどそんな気分じゃないし、やる気なし、ただただスポーティで音楽垂れ流してるだけ。
気がつけば彼女の事ばかり考えて寂しくなって、むなしくなって、……そんな最悪な夏休みだった。
実は、中学卒業の時、連絡をもらった女子から、電話がきたけど、振られてショックで、って話したら、会わない?
バクドで会って、話をして、慰めてもらったけど、それっきり……は~、 何も起こらなかった。
ようやく夏休みが終わる。
幸いにも、元カノは違う高校、元カノの高校の方が都心なので、駅は同じでも乗る電車の時間帯が全然違う、俺は部活もないから帰りが早い、まず会う事はない。
高校の友達には、彼女はいる事は知られていない、知っているのは、同じ中学出身者と、席が隣になっていろいろ話して親しくなった女子くらい。
振られたことについて、聞かれたら話すけれど・・・聞かれなければ・・・だから普段は同じ態度でいれば振られたことは気づかれない。
なんてしょうもない、ほんとちっちゃいな、俺。
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