真似っこクマ君
ここは素敵な動物学園。
秘密の世界の動物学園。
人間たちには知られない。秘密の世界の動物学園。
全ての動物が学びを得られる。そんな理念の元、今日も学校は始まります。
ひそひそ。ひそひそ。
小さな声で、友達同士がお話してます。
ひそひそ。ひそひそ。
周りに聞こえない、小さな声で秘密のお話しています。
「真似っこクマ君が来るぞ」
「真似っこばっかりの真似っこクマ君が来るぞ」
「やだやだ。何もできないくせに」
「真似も上手にできないくせに」
「真似っこクマ君がもうすぐ来るよ」
真似っこクマ君はクラスの中のはみだしものです。
いつも何でも一番だめです。
簡単なことをするのにも、誰よりも何よりもかかってしまいます。
「おはようみんな……」
大きな体を小さく丸めて、クマ君がやってきました。
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
「おはよう」
クラスのみんなは口々に、笑顔でクマ君へ朝の挨拶を送ります。
クマ君は一通り挨拶を終えると、自分の席に腰を下ろしました。
キンコンカンコン
授業を始める鐘が鳴ります。
一時間目はお歌の授業です。
クラスのみんなが順番に、歌を歌います。
時に明るく、時に楽しく、時に静かに……。
みんなそれぞれ思い思いに、お歌を披露します。
今の所一番上手なのは、鳥のウグイス君です。
ついにクマ君の番が来ました。
クマ君は一生懸命に歌います。
誰よりも一生懸命に歌います。
「ほーおけきょ。ほーけきょきょ」
クスクス。クスクス。
みんなは静かに、にこやかに。クマ君を応援しています。
クマ君は一番お歌が下手でした。
キンコンカンコン。
二時間目が始まりました。
編み物やお裁縫をする時間です。
みんなはそれぞれ好きなように編み物を始めます。
カッタン。コットン。カッタン。コットン。
一番上手なのは、鶴ちゃんです。おじいちゃんがプレゼントしてくれた機織り機で、美しい織物を織っていました。
カツン。カツン。
クマ君は一生懸命機織りをします。
頑張って溜めたお小遣いで買った、機織り機。
一生懸命動かして、綺麗な織物を作ろうとします。
ガツン。
「あ……」
クマ君は、つい、力を入れすぎてしまいました。
機織り機はゆがんでしまい、クマ君は続きが出来なくなりました。
クマ君は織物を作ることが出来ませんでした。
キンコンカンコン。
三時間目が始まりました。
三時間目は木登りです。
クラスで木登りが得意なおさる君。
ひょいひょいと身軽に登っていきます。
クマ君も木登りにチャレンジです。
おさる君のように華麗にジャンプ。
しかし、体が重いクマ君は思うようには飛べません。
枝に手がかかっても、ポキンとむなしく枝は折れます。
どしん。
重たい音が辺りに響きます。
「大丈夫クマ君?」
「大丈夫?」
「痛くない?」
まるで、徒競走のピストルが鳴ったかのように、みんなが心配そうにクマ君の所に来ます。
「うん。大丈夫。ありがとう……」
体の頑丈なクマ君は、ケガをすることなく、そこにいました。
キンコンカンコン。
授業は終わり。
みんなはおうちに帰ります。
仲良しこよしな友達同士で、おうちに帰ります。
クマ君は一人でおうちに帰りました。
おうちに帰って自分の部屋で、クマ君は丸くなりました。
今日も全部、失敗しちゃった……。
しくしく、めそめそ……。
何もできない自分が恥ずかしくて、クマ君はめそめそ泣いていました。
「クマ君どうしたの?」
「……」
いつの間にか、クマ君のお母さんが、近くに来ていました。
「何でもないよ、寝てるだけ……」
めそめそしてるのが恥ずかしくて、クマ君はさらに丸くなりました。
「そう。寝てるのね。冬眠するには早いわよ」
お母さんは笑います。
「クマ君。もうすぐご飯よ。早く起きてきてね」
「うん……」
しょんぼり声でクマ君は答えました。
そんなクマ君に、お母さんは優しい声でこう言いました。
「クマ君。あなたは私の自慢の子供よ。あなたはあなたで、何者にも代えがたい宝物。私はあなたが大好きよ」
お母さんは優しくクマ君の頭をなでると、その場をそっと去りました。
クマ君はなんだか余計にみじめに気持ちなって。なんだかお母さんに申し訳なくて、とっても怒りがわいてきて、しくしく泣いてしまいました。
「お母さん。ごめんなさい……」
クマ君は涙をぬぐうと、自分の部屋を後にしました……。
何気ない日常 うさぎ君 @asitamo
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