第7話 星だからホッシーって安直すぎるかな?
「どっこいしょっと……ふう、とりあえずこれであらかた回収できたかな。いやー物が多すぎて大変だねこりゃ。お金になれば良いけど」
埃かぶっていた書庫は、最初に入った時に比べ随分と物が散乱している。丁寧に収納されてはいたのだが、隙間がない程きっちり陳列されており、一々取り出しては確認して元に戻すを繰り返さなければいけなかったのだが、戻そうにも力が足りない。諦めるしかないのである。
「えーっと、大叔母様の魔法の杖に、箒……あと、んー」
「エーフィー! 私が入っていた宝箱にこんなのが入っていたよ。結構大事な物なんじゃない?」
どんな原理で鋭角の先が物を持ってるのか分からないが、器用なものだ。もしかして磁石でも入ってるんじゃないのか。
「これは……砂時計? でも中身なんて入ってないよ。割れても無いし……なんだろ」
「さあ? 記憶ないから分からないね。でも私と一緒に入ってたから解放に必要な物なんじゃない?」
「うーん、なるほど……使い方が分からないな〜、んん〜。手紙にはこれ以上書いてないし、宝箱はもう空っぽかぁ……」
もしかして、これも大叔母様の宿題の一つなのだろうか。気付けって事なのかな? 色んな人に聞いてみるしかなさそうだ。まずはシーナに相談してみよう。
「っていうか、もうこんな時間……ふぁぁあぁ、眠い。今日はこれくらいにしとこうかな。貴方はどうする?」
時刻は深夜1時を示していた。
どうりで体がきつい筈だ、今日は色々ありすぎて頭も破裂しそうだし、どちらにしろもう春休みに入ってるし、なんか星喋ってるし、寝るか。
「そうだねー、私も眠いし寝ようかな……」
「え⁉︎ あんた寝るの⁉︎」
衝撃の事実である、金属も眠くなるらしい。まだまだ世の中私の知らない事ばかりみたいだ。広いなぁ。
「なんだい! そりゃあ私だって眠くなるものさ、当然じゃないか! あ、さてはあれだな? どうせ睡眠なんか取らないから一生働かせようって魂胆だな⁉︎ 良いかいエーフィー、人には倫理観という物があるんだ。いくら私が人の形をしてないからって心はあるのさ。そこんとこもっと理解して欲しい物だね!」
さっき出会ったばかりの奴の事をそこまで理解出来る筈ないだろう。しかも謎の星形金属だぞ、無理がある。
「はいはい分かった分かったから。そういえばさ、名前はあるの?」
記憶を無くしてるのだから思い出せはしないだろうが、何となく聞いてみることにする。
「え? いや、知らんけど」
「ああそうそうだよね……うーん、なんて呼ばれたい?」
「特に希望はないけど、どうせならかっこいい名前がいいな! グランドクロスとか、スーパーノヴァとか!」
何言ってるんだこの金属は。
あれか? 一々スーパーノヴァーとか、グランドクロスー、ご飯よー! とか言わなきゃいけないのでしょ? 絶対嫌だし恥ずかしい。ミスった、流石にご飯は食べないだろう。
「嫌、もう無難にホッシーとかでいいじゃん。星だし」
我ながら最高のネーミングセンスである。可愛らしくてひょうきんな馴染みやすい名前だ。
「ええええ! そんな決め方しちゃうの⁉︎ もっと捻らない? ねえ捻ってよ!」
「嫌」
「ええい! それなら100歩譲ってスターはどうかな⁉︎ それなら私も納得できるよ! 夜空に煌く一番星、ああ、美しいじゃないか!」
「嫌」
「まあ確かにグランドクロスはやりすぎたかな? 呼びにくいもんねー」
「嫌」
「スーパーノヴァもねー、技名かよってハハ!」
「嫌」
「はい、ホッシー良いと思います……」
「よし」
やっと折れてくれた様だ。正直スターってのも嫌だし、なんかアホの子みたいじゃん。まだホッシーのが良いよ。
「ふぁあぁぁ……じゃあ今日はもう寝ようか、ホッシー」
「あ! 待った待った!」
ホッシーが左右の鋭角を胴体に擦り付けて、何かの準備をしている。
「どうしたの?」
「ええっと、なんだかまだ理解が追いついてないけど、よろしくねエーフィー。ほい、握手」
小さな先端をこちらに向け、友好の証を築こうとしている。
やっぱり、悪い奴ではないみたいだ。
「うん、こちらこそ。改めましてよろしく、ホッシー」
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