幼なじみとゲームをしてたら変な雰囲気になった

コーヒーとミルクを混ぜたやつ

第1話

ある日、俺は幼なじみとスマ〇ラをやっていた。俺が使うのは『だんだんノってきたよ!』でお馴染みのシュ〇クだ。対する彼女が使うのはピチ〇ー。実力は拮抗しているようで今まで勝ったり負けたりを繰り返している。


たった今試合が終わった。


「これが、モナドの力なのか……!?」

「勝ったの私のピチュ〇ーだけどね」

「そんな……嘘だ……未来は変えられないのか?」

「残念でしたぁ♪また私の勝ち~~」


言いながら俺の方を見てニヤニヤする彼女。煽ってくる姿は可愛くも憎たらしい。

そうしてテンション下げ下げになる俺である。


「あーあ、気分がだるいーごろごろごろしちゃうぞー」

「もう……だらしないなぁ」


俺がうつ伏せに寝そべると彼女は呆れてしまった。ゲームをやっていじけるのは自分でもどうかと思うが、彼女とは長い付き合いだからこの程度で関係が悪くなることはない。


「そんな悪い子には~こうだ!」


怠惰な俺は罰を与えられるようだ。目潰しか?それとも別の何か?


「……っ!」


次の瞬間、与えられた衝撃は俺の考えた予想のどれとも違っていた。


「重いでしょ~。ほらほら、立たないとずうっと乗ったままだよ?」


ちなみに、ここで『そうだね重いね』と返すと一週間は口を聞いて貰えなくなるので俺は細心の注意を払っていた。

背中に感じる重み、伝わってくる感触の柔らかさ!俺は瞬時に何が起きているかを把握した……!


彼女は俺の背中に馬乗りになっている......!そして顔は見えないがおそらく笑っている。

そうやって怠惰な俺を催促するかのようにお尻をぐりぐりと押し付けていた。彼女が動くたびにお尻が俺の背中で形を変えて押し潰される。


彼女は面白がっているだけかもしれない。

しかし、今の俺はそれどころではなかった。


唐突だが俺は尻フェチだ。だから申し訳ないがお尻を当てられると興奮してしまう。


お尻の魅力は身体のどの部位とも違う“程よい柔らかさ”だと俺は思う。

次に脚の付け根にあるという点だ。意味が分からないって?想像してくれ。スラッと伸びた足で美しさを感じたかと思えば、目線を上げていくと突然丸みを帯びたフォルムが現れるんだ。びっくりして興奮してもおかしくないだろ?


胸と決定的に違うのは部位として独立しているか否かだ。脚を下から伝っていくとやがてお尻との境界線に到達する。そしてその境界線から柔らかさが突然変化するのだ。これはもはや生命の神秘、人体の不思議と言っても過言ではない……!


――と言ったように素敵で魅力溢れる部位だと思っている。


しかし当然ながら尻フェチである事を俺は隠している。とくに彼女にはバレたくない。

彼女には早急に離れてもらう必要があった。それはもう一切の疑う余地もなく、自然に仕向ける必要がある。


俺は涙を呑んで自身の性癖を押し殺し、相変わらずお尻で踏んでくる彼女へ嘆願した。


「わ、分かった。確かにいじけて寝た俺が悪いな!だから離れてくれないか?」

「……まあ、いいけど」


深い考えがあった訳でもないのだろう。彼女は素直に離れてくれた。


あとは俺の昂った気持ち……下半身の特定部位に集合した情熱を静めるだけだ。だからそう――時間を稼ぐ必要がある。


俺は無い頭を総動員して彼女の興味を逸らそうとした。


「なあ、電源タップの事さ……実は俺すごく尊敬してるんだ。コンセントの奪い合いに終止符を打つなんてアイツすごいよ。電源タップの数だけコンセントたちには平和が訪れているんだ」

「……急にどうしたの?」


駄目だ、アレは頭のおかしな奴を見る目だ。誤魔化せる気がしない。ここはもっと彼女の気が惹ける何かを……。


「そういえばさ、パンの袋を閉じるアレの名前知ってるか?」

「バッククロージャ―の事?」

「そう、アレはバッククロージャ-って言うんだよ。面白いよな」

「……」

「……」

「というか……立たないの?もしかして何か隠してる?」


ヤバい。俺のトークスキルが限界だ。仕方ない、嘘はつきたくないが体調不良を訴えるしかない。


「……実は今朝から体調が悪くてさ。もう少し寝させて欲しいんだ」

「そうだったの?あ、でもうつ伏せは息苦しいよね。それなら仰向けになった方が良いんじゃないの?」


俺は言った事を一瞬で後悔した。すっごい優しくてこころがいたいよ。


「ごめん。やっぱり何でもない」

「……さっきから変だよ?……ちょっと触るね」

「ま、待ってくれ――」

「えいっ」


制止の言葉も空しく、俺はひっくり返された。


「…………」

「え!?あ……えと、その、どうしたのソレ」


顔を赤らめながらも彼女は視線を外してくれそうにない。

彼女が視線をチラチラと送る先、俺のそこはどうしようもなく盛り上がっていた。

というか理由を聞かないで欲しい。


「言わなきゃ駄目か?」

「えっと、ちょっと待って。さっきまでは普通だったと思うし……うーん」


いきなり推理を始めないで!せめて弁解させて!頼むよおおおおお!あああああああああああああ!!ほあああああああ!!


「あ……もしかして。私のお尻でそう、なっちゃったのかな?」

「黙秘権を行使します」


あ“あ”あ“あ”あ“あ”!!!バレたあああああああああああああ!!!!


「そ、そっか。大丈夫!私分かってるから!それで、その……戻るには時間がかかるの?」

「……時間をくれれば何とかなる」


たぶん分かってなーい!え、俺が説明すんの!?無理無理無理。


「あ、それじゃあ今日はもうお開きにしようよ。その方が……その、丁度いいでしょ?」


彼女は両手で顔を覆いながら、俺の顔とソレを交互に見遣りながら言った。

『何が丁度いいの!?』とは聞けない。言ったが最後、俺には自分の口で説明する羽目になる未来が見えた。これがビジョンだ。


しかし流石に誤解……でも何でもないが、とにかくこのまま帰る訳にはいかない。


「信じて欲しい。この反応に深い意味はないんだ」


海どころか水溜まりよりも浅い理由がそこにはある。


「うん、信じてるよ。今だって頑張って抑えてるもんね」


必死な俺を見る彼女の目は、何故か慈愛に満ちていた。


…………良し!たぶんセーフ!


「あ、ああ。とにかくそんな感じだ」

「そっか。じゃあまた明日ね」

「……また明日」


俺は笑顔で見送られて帰った。……家に帰ったらさっさと発散しよう。








「ふふっ、今日はカメラから目が離せないかも」

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幼なじみとゲームをしてたら変な雰囲気になった コーヒーとミルクを混ぜたやつ @suitcaseman

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