第19話
ピンチだ!
マリアとリアは、私に前に立つ。
テレサは、再度防壁を張ろうとするが、敵の攻撃を受け、魔法の発動に至らない。
囲まれた。
サマンサとは分断され、サマンサも周りを取り囲まれる。
大ピンチだ。
風が木の葉を舞いあげる
私たちを囲んでいた敵が、音もなく倒れた。
「遅れた」
ギムだ。
サマンサの周りの敵も、同様の倒れ方をする。
見えなかった・・・数十人の敵を倒す瞬間、どれも見えなかった。
これがギムの本気?
ギムは刀を鞘に納めると、私を抱きかかえる。
「え?ちょ・・ギム」
「敵に追いつく」
お姫様抱っこをしながらギムは走る・・って、なんて速さだ!
マックスの全速力を見ている私が、超驚く速さ。人なのか?お前は人か?
あっという間に、敵の背中が見える。
そして敵は止まった。ジプト領域内に入ったんだ。
敵の数は約300。
馬から降りて来たのは、偉そうな冠をかぶったおっさん。
「貴様ら!ここはジプト領だ!」
馬鹿め。今止まったら・・・・。
200人ほどが同時に倒れた。・・・こうなる。
ギムが、領土の事など気にするはずがない。
「私はスノープリンセスのギルドマスター雪姫。
ギルドの名に懸けて、あなた達は許さない」
「何を許さないというんだ?貴様たちは、見合いに行く護衛兵団を襲い、次期国主様を、わが領内で攻撃しているんだぞ」
(・・・え?まだその設定続いてたの?まだ放送中?・・だとしたら不味い。こっちも建前を理由にしないと)
「貴方たちが、だれであろうと関係ない。農家の人たちが、一つ一つ魂を込めて田畑に埋めた、コンニャクイモの種を踏みにじった罪!絶対許さない!」
建前だが、建前にもドラマは必要だ。
「聞こえんわ!掛かれ!」
100の残兵が、私たちに向かう。
私は覚えたての魔法を使う。
「サイレントスノーーーー!」
サイレントスノー、音もなく降り積もる雪。
全ての音を吸収し、悲鳴や断末魔の叫び声さえ聞こえぬ、静かなる最期を迎えさせる氷魔法。広域に敵を倒せる。
連中は凍り付いた。さて、凍った中に色男さんはいるかな?
「いい音、しやがるな」
ギムが凍った人を鞘で叩く。砕け散る。
おいおい・・・・・。砕くと蘇生できなくなるよ・・。
マリアとリアが追い付いてきた。
居た。クラリス姫のお相手の色男。間抜けな面のまま、凍り付いてた。親のロロ卿も居る。
この2体は持って帰ろう。優しくだよ。
「我々は、ここまでですね。後は国に任せましょう」
アーロン君の終結宣言。
「スノープリンセス!撤収!お疲れ様!」
後日、王様が来た。
「今回の働き、満足だ!報酬の3000G だ。受け取れ」
50+100+200+2000だけど?
「ボーナスだ。妻がな、雪姫とは仲良くしたい。色を付けろというからな」
太っ腹!有難う女王陛下・・これで私がギルマスに成って、初めての黒字だよ。
「良かったですね」
「流石はマスター。もう黒字を出すなんてね」
「ガオガオガオ」
「ダイル様は、おめでとうございますと、仰っております」
マリア、トーマ、ダイル!!有難う。
「今回はよ、雪姫の感ってやつに助けられたぜ」
「そうですね。マスターが気が付かなければ、危なかったです」
「マスターに神の加護を」
サマンサ、アーロン君、テレサ・・・みんなのおかげだよ。
「それからギム・・・招集には応じてね」
ギムの働きで助かったが、けじめはけじめだ。
「すまないかった。つい訓練に気が入ってな。次から気を付ける」
馬鹿だけど、ちゃんと謝るいい子だ。
「マスター、今回の入金で、今月は大幅黒字になりました。これはお祝いをするべきではないでしょうか?」
リアちゃん!良いこと言うね~
「今日は、宴会!美味しい物を食べに行こう!」
私たちは、マックスとやった宴会以来、宴会をやっていなかった。
ギルドの再開の時も、盃で乾杯しただけだ。
『軌道の乗って、マックスを安心させられたら、宴会を開こう』
を合言葉に頑張って来た。今回は、たまたまだけど、黒は黒。
今晩は宴会だ。
ーーールーラン王国 酒場ーーー
「えっと、本日は、ギルド再開以来、初めての黒字を記念して、乾杯!!」
私の音頭で、乾杯。
テーブルに並んだ料理を、酒を、みんなが奪いあう。
今日は幹部のみならず、付き人も一緒だ。
トーマの付き人は、3人目のギア族「クレア」
タイプはメイドタイプ。特に戦闘力は無いが、女子力は高い。
サマンサの付き人は、人間の「ノア」女の子だが、魔法が使える。
剣士のサマンサと、魔法使いのノア。いいコンビだ。
テレサの付き人は変わっている。
聖霊の「リーム」
魔族の血を引くテレサだが、心根はやさしく、精霊に気に入られた。
普段は姿を見せないが、美味しいものがあると出てくる。普段は食うだけの付き人。ハイビスカスの花の姿をした聖霊だが、怒ると超怖いらしい。
アーロン君の付き人は、獣人のブルック。
クマの獣人で力持ち。今は、けがの治療で国に帰っている。
私もまだ会っていない。
盛り上がる!宴もたけなわ!そうなると、話題はコイバナ。
トーマの付き人、クレアは密かに、トーマに恋をしている。
まぁ、マリアもギムにだけど、生贄は1人いればいい。
「トーマ~クレアっていい子だね~」
サマンサが突っつく。
「クレアは、掃除は勿論、料理の腕は抜群。いいお嫁さんになりますね」
おっと、ギャリソン迄食いつくか?
「あ、あの!そんなことありません!」
真っ赤になるクレア。
純情&奥手・・・見ていると煮え切らないものの、なぜか見たくなる存在。その行く末を、見守らずに入れない存在である。
「トーマ、いい子だよ。お嫁さんにどうかな?」
サマンサの強烈直球援護。あわあわしてるクレア。
「ん~クレアはいい子だよね。でも結婚となると、ママに聞いてみないとね」
そう、トーマはマザコンである。
色男として、多数の女性と付き合うが、「ママに」この一言で終わる。今回もこれで終了。
サマンサも、ギャルソンも、熱が冷めた様だ。
哀れクレア。援軍撤退。
と、なると・・・生贄はマリアとなる。
相手は横に座るギム。
マリアたちギア族は、前文明の遺物。
高度な機械技術を有した前文明時代、家庭用から兵器迄、幅広く使われていたのがギア族だ。
人と同じ感情を持ち、自分で判断できるギア族は、1種族として認められている。
当然、恋もする。
マリアの恋を実らせるべく、雪姫が動く。
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