第20話 恋せよ乙女

「ギム、だれか好きな人いる?」


外堀を埋めたりはしない。本丸に直接攻撃。




「好きか?ウィスキーより日本酒だな」


言葉分かるか?誰かって聞いたよね。


「マスター無駄です。この方に聞くときは、分かりやすく聞かないと、ダメです」


リアちゃんのアドバイス。これ以上分かりやすくって・・・。




「ギム、マリアのこと好き?」


これ以上ない直球だ。


「ああ、好きだぞ。マリアは酒を付き合ってくれるからな。マリアは、手に持つだけで燗が出来る。いいやつだ」


・・・言葉が出ない。類稀な鈍感だ。が、隣のマリアは満更でもなかった。理由はどうあれ「好き」と言われたことには違いない。


上機嫌で、ギムの盃に酒を注ぐ。




「マリア、ちっと来て」


マリアはナイスボディーなんだ。武器は使わないと。


まず、男なら反応する色気だ。


「ジャージってのも問題だけど、もう少し、胸元開けてさ。こう!」


マりアの胸元のファスナーを、半分まで下ろした。銀色だけど半乳が見える。




「でも、胸元は・・・」


「分かってる。クリスタルがあるから、隠したいのは分かる。でもね、男はね、その隠したい姿に、反応するんだよ」


JKのコイバナは、世間が思うほど爽やかではない。


放送なら「ピー」音で、会話に成らないような内容を話している。




男の弱点は「隠したがる所を、チラ見せしながら恥じらう。これでイチコロ」


と、やりすぎ同級生が話していた。




「さぁ、この格好で色っぽく迫る。こんな感じだよ。いいね?」


「・・・はい。マスターが仰るなら、私頑張ります」


マリアはギムの横に座ると、テーブルに反身を乗り出し、下から上目使いで、胸元を隠すように手で押さえ「ねぇ・・・ギム」


これはいったな。


見ていた雪姫は確信した。完璧なポーズと角度。これで落ちなければ、犬かバッタだ。


「マリア・・・眠いのか?」


(・・・・・くそ!バッタか、あいつは!)






雪姫は燃えた。「この恋、私が実らせる!」


雪姫の部屋では人知れず、ギルドフラッグに炎が灯る。




「マスター、ギムに色気は無理です。あいつは生殖器官の代わりに、風鈴が、ぶら下がってますから」


アーロン君・・・


「そうそう。風鈴の舌に結わえてある短冊にね「剣&酒」って書いてあるんだぜ!」


マジか?




色気がダメなら直接攻撃だ。物理的な色気で勝負!




雪姫はマリアとギムの間に入ると、ギムの左手を持ち、マリアの胸に押し当てた。


「!!!」


赤面するマリア。


「どう?ギム。マリアの胸だよ」


これで反応しなければ、ミトコンドリアだ。


「硬い」


(死んでしまえ!!!)




「マスター・・・・私、ギムに胸を・・」


なに幸せそうな顔してる?乙女か?乙女だろう?乙女だよな?


「だって鷲掴み・・・です」


・・・こっちもダメだ。




「雪姫、無理だってばよ」


見ていたサマンサは、楽しそうに笑う。


「雪姫様、努力は認めますが、さすがにギム様相手では」


ギャリソン迄か?


「ガオガオガオ」


「ダイル様は、不可能は不可能だから不可能と言います。と仰っております」


あんたら、付き合い長いんだから、なんかないの?






「マスター、恋の相談なら、僕以外に居ないのでは?」


ママに相談とか無しよ。




「恋とは、押せば離れ、引けば寄って来るものです。今のように、気のない相手に、強引に行くのはダメです」


ほうほう・・流石はスケコマシ。




「気のない相手には、引いて構えます。いつもと違う態度で接し、その変化で、相手の心を揺さぶるのです」


トーマ見直した!


「また、弱った自分を見せるのも、効果的です」


神だ!神が降臨した!






「行くよマリア!不屈の魂は、何事にも屈せず、何物にも屈せずだよ」


「マスター。あの、まだ胸の余韻が・・・」


おい。




「いい?ギムに、いつもと違う態度で接するの。そうね・・・お酒、注いで上げないとかが、いいかな?」


「・・・そんな・・・ギム死んでしまいます」


死なねぇよ。


「冷たい態度。これが相手を引き寄せるって、マザコンが言ってた」


「冷たい態度・・・ですか?分かりました。やってみます」




マリアが座る。


ギムは、変わらず飲んでいた。


ギムの盃が空く。が、マリアは酒を注がない。


「マリア、酒」


ギムは当たり前のように、杯をマリアの差し出す。


「・・・・・・」


「マリア・・お前・・」


ギムのマリアを見る目が変わった。


「おおおお。今度は行けそうだ」


雪姫、期待する。


「ルル!マリアが壊れた!お酌機能がぶっ壊れた」


(ねぇよ!そんな機能!)




もうだめだ・・・不屈の魂が折れそうだ。


「マスター、最後の手段です。マリア様の機能を弱らせます」


ルル?出来るの?


「私も見ていました。マリア様が不憫です。なんとしてもギム様に、想いを酌み取っていただかないと」




最後の手段。弱ったところを見せる。


奥でルルがマリアの調整をしてきた。


「マ・・スター。これで・・・宜しいで、しょうか?」


うぁ。目がかわいい。そうだ。男子が言っていた。


 「見舞いに行った時にな、なんか惚れちゃってよ」


男は、弱った女の子が大好きだ!






マリアをギムの横に座らせた。


自分では歩けない状態だ。




寄りかかるマリア。


「どうしたマリア?」


「・・・ごめんね・・なんか・力が入らなくて」


「!!!!!ルル!マリアを見てくれ!様子がおかしい!」


ギムが慌てた。


「申し訳ありませんギム様。マリア様は現在、50%の出力しか出せません」


ルルが説明する。


「それって大丈夫なのか?マリアは壊れないよな?」


相当慌ててる。


「はい。故障ではありませんが、直ちにお部屋で休む必要があります」


妖精のルル!上手いぞ!




「マリア、今日はもう帰れ。な、休むんだ」


「うん・・でも体に力が・・」


「俺が連れて行く。マリア、いいな?」


おお~お持ち帰りだ。




「ギム様、マリア様をよろしくお願いします」


ギャリソンの追い打ち。


「ギム、マリアを寝かせたら、添い寝をしてあげな。じゃないとマリアは治らないぜ」


ナイスだサマンサ!




「分かった。寝かせたら添い寝だな。横に寝ればいいんだな?」


「任せたよギム」


(完璧だ。ギア族にも、H機能はあると聞いた。同衾さえしてしまえば・・)


ギムはマリアをお姫様抱っこすると、マリアの部屋、ギルドの2Fに向かった。


マリアは弱った腕を上げ、親指を立てていた。




「ララ、今日は泊まらせて」


マリアの付き人のルルは、マリアの部屋で一緒に住んでいる。


今日は部屋には戻れない。ギムと住むララの館に泊まるつもりだ。






マリアの部屋。


ギムは抱えたマリアをベットに寝かせる。


服はどうしようとか?脱がせた方がいいか?とか、考える頭はない。


ただマリアを布団に寝かせ、自分も横に寝る。




大人の時間の始まりだ。




が、ギム・・この男、ベットに入ると、10秒で寝れる男。


マリアもまた、機能制限中。動けない。




なにも起こらない。ただ並んで寝ているだけ。


翌日、それを知った雪姫は、ただただ脱力。




次回こそはと、燃える雪姫だった。


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