第17話

ーーーギルド会議室ーーー


「本件は、国同士の問題です。見合いの話ではありません。ギルドとしては手を引くべきですね」


副ギルドマスターとしての、アーロン君の意見だ。


「私もそう思います」


「あたいもだね」


「ですね。ギルドが出る場面ではないでしょう」


マリア、サマンサ、トーマもアーロンの意見に賛成だ。




「ごめん、みんな。なんか違和感があるんだ。なにが、どうとは言えないけど・・・なんかが変だと感じてる」


雪姫の意見。


「違和感・・ですか?」


「なにか変かい?」


(うまく言えないよ・・なんだろう?)


「ガオガオガオ」


「ダイル様は、雪姫様が仰るのなら、何かがあるかもしれません。少し考えてみましょう。と、仰っておられます」


「私もマスターの感を信じます」


(ダイル・・テレサ・・ありがとう)




「では、もう一度話を整理してみましょう」


アーロンが、話を整理するようにリアに指示した。




リアは今までの流れを、箇条書きにして、黒板に示した。


①商人が女王へ見合いの話を持ち込む。


②女王は乗る気で、話が進められ、見合いの日時と場所が決まる。


③女王が身辺調査で、相手トーマスの悪行を知る。


④ジプト帝国内で謀反発生。


⑤軍部による謀反は成功。


私たちが、関与していない部分だけを上げると、こんな流れだ。




「①の段階で、今回の謀反が計画されていたとなると、見合いの話は、足止めと警告の意味になります」


「昨日今日に決めた決起ではないでしょうから、計画はお見合いを含めたものと考えていいでしょうね」


アローンとマリアの意見。


「見合い事体どうでも良い。身辺調査は、織り込み済みと言う事だね」


「目的はあくまでも、足止め。と言うか、今後の両国の事を考えろ。ですね」


サマンサとトーマの意見。


(確かにそうだ。だけどなんだ?この胸のつっかえは?)




「宜しいでしょうか?」


ギャリソンが手を上げた。


「雪姫様が言いたいのは、見合いの話など、『必要ない』と、いう事ではないでしょうか?」




「!!!それだ!」


クラリスと婚約しようがしまいが、安保は王の依頼が必要だ。


身柄を確保された王は、依頼が出せない。どのみち、ルーランは、内政干渉に成る為、派兵が出来ない。


お見合いを、してもしなくても、指を咥えて見ているだけだ。




「確かに、そう言われれば・・そうですね」


「ならなんでわざわざ?なんでしょうか?」


アローン君、マリア、教えてあげるよ。


「あの集結している兵は、こっちに向かわせる気だ。ジプト国と、ルーラン王国、両方狙ってるんだよ」


私は違和感の正体が分かると、答えがスラスラと出て来た。




「マスター。国王より、連絡です。すぐ来て欲しいとのことです」


リアちゃんが、王からの連絡を取った。


会議は一時中断。王に呼ばれたのをスルーする訳には行かない。


私とマリアで行くことにした。






「すまんな、急に呼び出して。会議なんだが、意見が割れてな。妻がお前の意見を聞きたいと言う」


王は雪姫に礼をした。


この王、礼節を相手関係なく守る男だ。




「わしらの意見だ。トーマスは、クラリスとの結婚を強く意識して見せている。


ジプト国の掌握後、両国で、王子と王女が結ばれることで、更なる関係を築こうと、この見合いにメッセージを込めたものと思われる」


王は自信ありげに言う。




「違うと思います!今、集結している兵は、ルーランに向けて進軍する兵です」


雪姫は、強く自分の意見を主張した。


「ほら見なさい!雪姫さんも、私と同じ意見ですわ」


ステラ女王が、叫ぶように言う。




「・・・お前もなのか?」


恐らく、王と幹部達が、ステラ女王の意見を聞かなかったのだろう。


劣勢のステラ女王が、援軍のために、私を呼んだのだ。




「ここから先は、私の読みです。恐らく、この見合いの話は、すでに隣国で広まっています。あの兵を動かす理由は、トーマスの護衛です。護衛と称し、ルーランに大量の兵を入れるつもりです。


もし進軍に、ルーランが兵をぶつければ、奴らは見合いの護衛を討ったと、隣国に流布します」


ステラ王女は、私の後ろに回る。そして両手を肩に添えた。




「その通りです。既に相手側に出した、護衛兵団の許可。彼らはそれを盾に進軍してくるはずです。私たちは、敵の侵入に手を出せないまま、攻撃を受けることに成るでしょう」


私の読みと、女王の読みは完全に一致している。




見合いの約束は、この国に堂々と兵を送ることだ。


ロロ卿は、私たちが謀反を知らないと思っているはず。この機に一気に来る。




「・・・なるほど・・・」


「確かに女王陛下の読みも、ありえますな」


「しかし、どう防げば?」


「下手に兵を出せば、隣国での我が国の評価は・・」


「手をこまねて居れば、侵入を許す事に・・」


国の幹部たちは頭を抱えた。上手く絡み取られている。




「国同士なら、大問題ですよね。マスター」


マリアだ。


「そうだね。国同士ならね」


王がこっちを見た。


「そうか!ギルドなら・・・お前等なら」




そう、私たちは、何者にも屈せず。何事にも屈せず。


「お国の事情なんか気にしない。守ると思うモノのために、私たちは動く。依頼があれば、ですけどね」




「すぐに通過予定地の地主に、依頼を入れさせますわ」


そうそう、国からの依頼じゃ、国が動くのと同じ。


地主に適当な理由で依頼させれば、私たちが進軍を止めて見せる。




      「その依頼!受けた!」




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