第16話

3日後。


出るわ出るわ。打ち出の小槌か?と、思うほど、出てきたスキャンダル。女王が使ったのは国の情報部。ギルドの情報部とは、比べ物にならない力差がある。




「過去10年で付き合っていた女性295人。うちR-18関係290人」


「貢がせて、自殺に追いやった女性56人」


「幼女に手を出した回数120件」


鬼の様だ。流石のトーマも開いた口が塞がらない。


「幼女・・って手もありましたね」


おい!


しかも・・・


「ルーラン国内での被害女性7人。1人は自殺」


これは、許すわけにはいかなくなった。隣国の話では済まされない。




流石はギルドの諜報部だ。わずかな時間で、証拠を付けて持ってきてくれた。この優秀さなら、私のパンツの色ぐらい知っているはずだ。


この情報と証拠を持って、王宮へ行く。




王宮には当然門番が居る。


「王様に会いたいんだけどね」


同行のサマンサが、門番に伝える。


「アポは、おとりですか?」


「ないない。そんなの面倒なもん取るかよ」


普通は追い返される。




「国王に連絡してみます」


門番から、大国の王に直電。普通はない。


「お通しするようにとのことです。どうぞ。お部屋は分かりますよね」


が、この国ルーランではアリだ。




下からの報告も、きちんと耳に入れる。


風通しの良さが、下々の声を聴ける・・と言い、それは見事に実行されている。流石は「出来すぎ王」だ。






「よくいらしてくださいました」


ステラ女王が出迎えてくれた。


(門から此処迄、私たち2人できたんだけど・・・警備薄くね?)


「私たちの情報部が調べた結果です」


雪姫が資料を渡す。




「雪姫~~~~」


ヤモリ姫が、壁に張り付いて、手を振った。


(ヤモリか・・よく言ったもんだ)




「これは・・・・・」


ゴルノバ王も、言葉を失う。


「私は何という相手を・・・」


ステラ女王は、自らの失策に嘆く。


「王様、これは見合いどころじゃないぜ」


「ルーランでの被害がある以上、逮捕するべきだと思います」


王は頷く。


「すぐに逮捕状を出そう。入国次第、身柄の確保だ」


ジプト国内の出来事に関しては、手が出せないが、ルーラン国内の犯罪は、入国していれば、ルーランの法律で裁ける。


「これで見合いの話はおじゃんだ」


安堵の表情のゴルノバ王。


「ええ、娘に顔向けできますわ」


手を合わせ、拝むように言う女王。


(それ、死んだ娘さんにする態度ね)




が・・・。


(なんか変だ)


雪姫の中に違和感が走る。




ルーラン国内でやらかした犯罪・・忘れた訳ではあるまい。


王女と見合いともなれば、身辺調査されるのは当然。犯罪が露呈するような真似?するか?


・・・それに国内に来れば、逮捕されるかもって考えないか?


何かおかしい。




「国王陛下、お客様に電話です。ギルドからです」


衛兵が、電話を持ってやってきた。


「雪姫、電話だそうだ」


王は私に、電話機を渡してくれた。




「もしもし、私だよ・・・・うん。え?それって。うん。うん。分かった。ちょい待ち」


私は電話を離し、王に電話の内容を話す。


「今、情報部から新しい情報が来ました。ジプト国内で謀反が起こったそうです。ラー王と、パトラ女王、ツタン王子が監禁されたとのことです」




「!!!」


「まさか!?」


王も女王も顔色を変えた。


「ゲートの使用許可を。情報部のジェームスに直接来て話を・・」


「許可する!王宮内のゲート使用を認める!」


それを聞いた近衛兵は、直ちにゲート阻害を解除した。




ゲート阻害。


特殊な石を使い、ゲートを開かせないようにする事が出来る。


「私だよ!ゲートの使用許可、出たよ」


電話で伝える。ゲートが開き、ジェームス係長が来た。


「緊急時に付き、ご挨拶は省かせていただきます」


ジェームスは、深く礼をすると、すぐに説明に入った。






「本日14:00 王宮内の近衛兵26名を殺害の後、ラー国王、パトラ女王の身柄を監禁。14:40 ツタン王子の身柄と侍女5人も確保されました。実行部隊はロロ卿の私設軍。謀反の情報は、まだ出回っておりません。更に国内の軍が、集結中との情報も得ました」


確実に謀反だ。


「なんという事でしょう」


ステラ女王は口を押え、震える。


「軍が集結しているとなると、謀反は成功・・と言う事だ」


道半ばなら、軍は各拠点の制圧や、反対勢力の対応に当たる。


既に集結を始めたという事は、謀反が成功に終わったことを意味していた。




(やっぱりおかしい。謀反の最中に見合いの話など、進めるはずがない)


「見合いの話は、わしらを抑える為か?」


そうなの?




ルーラン王国と、ジプト国は安保で結ばれていた。


どちらかの国に何かがあれば、協力し合う約束だ。


謀反などは、国内の事なので、内政干渉に成るが、王からの依頼があれば、ルーランは兵を送り込める。


「見合いの話を出し、国を掌握する。ワシらが兵を派兵すれば、今後の友好は無い。そう言いたいのであろう」


「私に話を持って来た商人も、一枚噛んでいる、という事ですわね」


(なるほど。なんとなく、辻褄が合う・・けど何だろう、違和感が消えない)




「これより会議を開く。今後の対応を決める」


王は会議の指示を出す。


「私たちも戻ります。こちらでも、今後の方針を決めておきます」


私たちもギルドへ戻った。




作戦会議だ。

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