第15話

女王陛下を見送ろうと、ドアまで来た時、ギムが入って来た。


「ん?王さん来てるって聞いたから来たんだが・・ステラか」


王さん!女王陛下呼び捨て!!!首飛んだ!




「あら、ギムさん。今日は私用できましたのよ」


え?お怒りなしなの?


「そっか、後で行くから、旨い酒を飲ませてくれ」


「ええ、待っていますわ」


え?ええええ?


「では、雪姫さん、よろしくですわ」


王女は、何事もなかったように帰って行った。




ギム・・あんた何者?




「ギムは国王陛下の剣術指南役です。女王にも、剣の手ほどきをしています」


アーロンの説明に続き、リアも部屋に入るなり付け加えた。


「ギム様は、王国軍の剣術も見ておられです」


なるほど、だからって、呼び捨て良いの?


「はい。ギム様ですから」


(あ・・納得。こいつに敬語とか無理だ)






「リア~~~~よくも、私を置いて逃げたね~」


リアの胸のクリスタルは赤。充電をしてきたのは本当だ。


そのクリスタルを、軽くツンツンしながら詰め寄った。


「すみません、マスター・・・そこは・・だめ・・」


ギア族の急所。このクリスタルを強く押し込むと、電源が切れる。


動かなくなってしまう。






「しかし、この依頼。難易度高いですね」


冷静なアーロンが、顔をしかめた。


こちらには非が無い状態で、相手から断らせる。


「そう?この写真を付き付けば?」


雪姫は簡単だと考えていた。




「無理だと思います。元々貴族は、シモに品格が無いですからね。


貴族を相手にするという事は、了承していますという意味にとられるでしょう」


数枚の写真を手にしたアーロンが、R-18をまじまじと見ながら言う。


「はい。バツが悪くはなるかもしれませんが、致命的な理由にはならないと思います」


胸のクリスタルを、手で覆い隠すリア。


「良し!会議だ!作戦会議。幹部招集!」


「あ、雪姫すまん。これから王宮で訓練だ」


(お前は行ってよし。会議にはいらない)


笑顔で、ギムを送り出す。






ーーースノープリンセス、会議室ーーー


幹部6人が椅子に掛け、その付き人が後ろに立つ。


「と、言う訳で、みんなの意見を聞きたいの」


雪姫が経緯の説明を終えた。




「ガオガオガオ~」


「ダイル様は、裏から脅しをかけては、と申しています」


ダイルの付き人「カウラ」人間の女性。ダイルの発する言葉を理解し、通訳してくれる。自分からの発言は少ないが、酒を飲むと活舌に成る。




「脅しですか・・悪くはないですね。脅しのネタは女性問題ですね」


「無理だと思うよ。女ったらしってさ、罪悪感なんかないからね。突っ込まれても、そうなの?で済んじゃうよ」


アーロンの意見を、真っ向から否定したのは、女ったらしの経験豊かなトーマだ。




「となると、やはり調査が必要になるかと思います」


マリアの正論。


「うちの情報部を使えば、丸裸になるぜ」


サマンサの案。


(確かに情報部は優秀だ。ここは情報部に応援だな)


「あ、あの、よろしいでしょうか?」


テレサが手を上げた。


「代役を立てるというのは?」


???




テレサの案。


貴族はメンツを重んじる。見合いで断られた、というのは恥に成る。


こちらから強く、拒否の姿勢を見せることで、断られるより、断ったほうがいい、と考えるようになる。強い拒否の意思。それは身代わりを出すことだ。


「なるほど。王女の印である冠を被り、王や女王が「これが娘だ」と言えば、相手は例え偽物とわかっていても、反論は出来ませんね」


それが強く意思を示す行為となる。




「理由を提示する必要がありますが、この写真を見せることで、こちらの意図は伝わるでしょう」


マリアも、この案に賛成の様だ。


「お見合いは非公式だよね。なら、相手は穏便に終わらせることを考える。断りを入れてくるはずさ」


サマンサも同意した。


「複数人を孕ませた程度では、少しネタとしては弱そうですが、そこは情報部の働きに期待しますか?」


(複数・・弱いって、トーマあんたも、まさか?だよね?)




「ガオガオガオ」


「ドイル様は、脅しと両方で行くべきだと、仰っております」


「良し!テレサの策に、脅し含みで実行。情報部に協力要請」


作戦が決まった。ギムが居ないとスムーズだ。






「皆さん、ご安心ください。我らが情報部が動けば、何人たちとも丸裸。既にエージェントを派遣しております」


情報部から、ジェームス係長が来た。


「頼もしいよ。噂に聞いたスノープリンセスの情報部、その力、見せてもらうよ」


ジェームスは頷く。




「そうそう、マリア様」


ジェームスの言葉に、マリアはビクッ!っと体が跳ね上がる。


「武器回路の第2基盤ですが、少々焼け焦げが見られます。武器使用時の弊害があるかもしれません。早急にお取替えをお勧めします」


マリアは胸を手で覆い、俯いた。




「それからトーマ様」


トーマが死にそうな顔に成った。


「今朝がた母上様に、洗濯を頼まれましたね。中のパンツ2枚、黄ばみが取れないという事で、母上様は処分なさりました。確か予備が、タンスにはないはずです。お帰りの際、ご購入をお勧めします」


トーマも下を向いて、ブツブツ言いだした。




「それから・・・」


「もういい!分かった、優秀なの分かったよ。これ以上、うちの戦力削らないで」


私は慌てて止めた。




トーマとマリアが、俯いたままブツブツ言っている。


とんだ精神攻撃だ。




「流石は雪姫様。お判りいただけて幸いです。優秀な雪姫様に、私から一つ助言を。白のパンツが可愛らしいです。しかしブラのサイズが、少し大きいようです。サイズに見栄を張ると、形に悪影響が・・」


(ぐはぁぁぁぁぁ・・・何で知ってやがる!?)




私に知らない事は無い、と豪語するこの男、ギルド最強。


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