第14話
ルーラン王国、国王「ゴルノバ」
屈強な肉体と、強い意志を感じさせるお顔。
雰囲気はマックスと似ている。
この王様、ただの王様にあらず。
戦いの場においては、自らが先頭に立ち、敵を薙ぎ払う猛者。
王の立場にありながら、兵士と共に訓練をし、汗を流し、飯を食う。
奴隷制度の廃止や、獣人、ギア族や他種族を、平等に扱う法令を出し、国民の絶大な支持を受けた、完璧な名君。
こんな国王を、国民は尊敬の念を込め、こう呼ぶ。
「出来すぎ王」と。
「今日来たのは、娘の見合いの話だ」
(やっぱりキターーーーーー)
座ってても威厳と言うか、オーラを感じる。
威風堂々って、こいつの為の言葉だ。
雪姫はアーロンをチラ見する。援護要請だ。が、アーロン、本を読んだ振りをしてスルー。リアに出した援護要請も、却下される。
リアは「充電してくる」と、部屋を出て行った。
雪姫、この王と1対1。
「1週間後、娘の見合いがある。壊せ」
「へ?」
「互いに立場がある身だ。誰もが納得できるように、無難に壊せ」
(あれぇぇ?パパもお見合い反対?なの?)
「えっと、ゴルノバ国王、お見合いを壊していいのですか?」
一応確認する。
「妻が進めている話だが、先日クラリスに話した所・・・」
(嫌がられたんだよね)
「それ以降、口をきいてくれにゃい!!」
にゃいだと!?
「ワシは娘に嫌われたら、生きて行けにゃい!!」
泣くな!
「100Gです。違約金は無し。失敗はこちらのダメージにもなります」
アーロンが口にした。
(50G増えてるぞ。しかも同一内容だぞ。2重取するつもりか?)
「いいだろう。娘と仲直りができるのなら、安いものだ!」
王は納得した。
「えっと、その依頼、引き受けさせていただきます」
契約成立!
トントン。「雪姫様、女王陛下がお越しです」
またドアの外から、ギャリソンの声がした。
「妻だと!?わしの妨害工作に気が付いたか?雪姫、確かに契約したぞ。妻の依頼は断るがいい!」
窓に飛びつくと、そのまま飛び降りた。
(あんたら親子だね)
「雪姫さん、初めまして。女王のステラでございます」
女王陛下。美しくも気品に溢れ、王の後ろに控える出来た女性。
若き頃は、短剣の使い手として名を馳せ、有事の際は軍師として知略を振るい、王を支える名女王。
国民の支持は異常なまでの高さ。尊敬の念を込め呼ばれた名が
「ミネルバ」
知の女神にして、その鋭い爪で敵を切り裂く。短剣使いになぞられた2つ名。軍師の底の底まで見通す目が、早くも雪姫を圧倒する。
「えっと、今日はどのような御用で?」
雪姫、僅かな希望を持ち尋ねる。
「・・・夫が居ましたね?娘・・クラリスも居ましたか?」
(なんでわかる?)
「残り香ですわ」
「・・・・・」
言葉にならない衝撃。この人相手には、嘘偽りは通じないと知る。
緊急援護要請!とても戦える相手ではない。雪姫はアーロンを見る。
チラ見ではなく明らかな、援護要請。が、アーロン逃走。
だてに年は取っていない。隙を見て退室。雪姫、今度こそ孤立。
「依頼の内容は、既にご存知ですよね」
娘と王が居たなら、依頼はしているはず。読みは正しい。
「えっとぉ~依頼内容に関しては守秘義務が・・」
ギルドマスターとしては当然の事だ。が・・・。
「守秘義務をお使いに成るという事は、依頼はあったとの認識でよろしいですか?」
1枚も2枚も上手!
「はい。お二人からご依頼がありまして、受理いたしました」
小娘に勝てる相手ではないと悟る。雪姫陥落。
「そうですか。お見合いを壊せと・・ですわね」
「はい。その通りでございます」
「では、私からの依頼です。お見合いを壊してください」
「はい・・・・ヴぇ?」
「迂闊でした。信用のある方からの紹介で、お会いした際も、好感が持てた方でしたが・・・」
ステラは、テーブルの上に封筒を置いた。
「・・・中を見ても?」
「どうぞ」
女王は、手の平を出し、見るように即した。
「うぁぁぁぁぁ」
複数の女性と、イチャ付く男の写真。中にはR-18もある。
「貴族の殿方です。それなりに女性とのお付き合いは、あるものです。しかし、当方の調査部が調べたところ、複数の方との間に、お子様がいらっしゃったり・・・」
「女の敵だ!分かりました女王陛下!お任せください!」
クラリス姫を、こんなスケコマシのお嫁さんになんかしない!
「200Gです。違約金は無し。失敗はこちらのダメージにもなります」
クローゼットからアローンが出て来た。
(って、そこに隠れてたんかよ)
「結構です。個別に依頼した以上、娘や夫からも報酬を取って構いません」
(お?太っ腹だね)
「では、この依頼!受けました。必ずぶち壊して見せます」
契約成立。
「勘違いなさらないでください。私の依頼は、当家がダメージを受けないよう、相手から断って頂くように、仕向けていただく事です」
(あれ?ハードル上がったよ)
「相手からですか?」
「はい。このような大切なことを、身辺調査もせずに進めて来たのは、私のミスです。私のミスで、夫の顔に泥を塗り、娘の経歴に土を付ける訳にはまいりません」
ステラの顔は真剣だった。
「先方様から断られる。当家に非は無く、一方的な理由で。これでお願いします。娘も、これなら許してくれることでしょう」
(親が子を案ずる。当然の事だが、ステラ女王も、クラリスを愛してるんだな)
「娘に嫌われたら生きていけませんわ!!!」
やっぱ泣くんだ。
「先方様は、すでに乗る気満々です。先日、入国の際に、護衛兵団を伴う許可を取り付けています。事は急を要します」
(そりゃ、クラリス王女と結婚すれば、次期国主。美味しいよね)
「早急に善処します」
女王陛下は笑顔になった。
「この資料は預からせていただきます。あと・・」
「どのような協力も惜しみません。私から娘と夫には、この事を伝えます」
頭がいい人は、話が早い。
「では、よろしくお願いいたします」
女王は部屋を出ようとした。
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