第11話

ギルド受付。


クエストから戻った冒険者たちを、最初に向か入れる部署。




クエストで傷ついた時もある。失敗し、落ち込んでいる時もある。


そんな彼らを、温かく向かい入れる場所。それがギルドの受付。






「またかい!あんた達、何度失敗すれば、気が済みむんだい!」


受付嬢ジェシカ。背丈250cm。胸部周り250cm。腹部周り250cm。巨大な寸胴が、受付で大きな声を上げる。




「5連敗とかないよ!次からペット探しでもしな!」


クエストの失敗続きの冒険者チームが戻り、激を飛ばす。


「3連敗以上はゴミだよ!明日来るときは『私はゴミです』って名札付けて来るんだね。付けてないと中に入れないよ」


指をポキポキ鳴らす。




激もまた、愛。たぶん愛。きっと愛。






「あの、新規で登録したいのですが」


幼い男の子と女の子。新品の剣を身に着け、傷一つない防具を着る。


冒険者を夢見、12歳の解禁の時を待ち、今、新しい世界へ、夢と希望を胸にやってきた新規登録者。




「ふ~~ん、あんたたち、なるの?年は大丈夫よね」


指先にネイルをしながら、横目で見る受付嬢「アリーン」


「はい。僕たち12歳になりました。大丈夫です」


年齢制限。R-12。


冒険者は身一つで稼ぐ仕事。危険なことは勿論、命を落とすこともある仕事。年齢には制限が掛かっている。11歳未満は、冒険者登録不可である。




「ふ~ん3ヶ月かな?奥の1番窓口で、登録料を払った後、4番窓口で身長や体重計って。棺桶作るから」


相変わらず、ネイルの手は休めない。


が、幼い冒険者は、礼をすると、1番窓口にかけって行った。




「3ヶ月・・かい。お可哀そうにね」。


ジェシカの言葉の意味は、推定余命3ヶ月である。


長年窓口業務をこなしてきたアリーンは、一目見ると、冒険者の資質が分かる、特殊能力を身に着けた。長年の感が、幼い冒険者の余命を予言した。






「おい!そこのボケカス!またクエスト失敗か!くず!」


もう一人の受付嬢「ミリア」。戻ってきた冒険者を指さし怒鳴る。


ギルド再稼働の際に雇われた新人。受付嬢としての、ジェシカとアリーンを、尊敬の念で見る少女。




「失敗するなら、クエストなんか受けるな!」


真似である。単にジェシカの真似をしているだけである。


「2か月半!」


適当である。これも尊敬する先輩アリーンの真似である。


形から入る女。ミリア。




そんなミリアに、冒険者は近寄って行く。


「おい、ミリア。俺たちはクエスト成功して戻ったんだぜ」


ミリアの頭に、大きな手を載せ、撫でながら冒険者は言う。


「う、うるさいよ!次は失敗するから!先に予言したの!!」


足掻くミリアを、冒険者もまた、温かく見守ってる。






「遅いね・・」


ジェシカが時計を見た。


「バッカスのチーム、だよね」


アリーンも気が付いていた。




クエストに出る時は、予定表を提出する。クエスト内容から、チーム全員の名前、戻りの予定時間も記入される。


「でも、まだ8時間ありますよ」


バッカスの予定表を見ながら、ミリアは言う。




「あいつらなら、他の連中の半分で達成できるはずだよ」


「あねさん、この場所は東側のルートを通ると・・」


地図を広げて、目的の場所を見ていたアリーンが指さす。


「先週モンスターの目撃情報があった場所かい。嫌な予感がするね」




受付嬢。単に笑顔を振りまくだけにあらず。


冒険者の力量と特性を把握、予定表を見ながら、トラブルは無いかに気を配る。




「モンスターの目撃・・・バッカスさん達、心配ですね」


ミリアも不安げな顔つきに成る。


ジェシカの感は、的中度が高いからだ。


「出かける時、『先週、子供が生まれた』って‥喜んでいたのに。無事だといいけど」


ミリアの一言。


「あんたそれ!死亡フラグだよ!」


「あねさん、緊急援護要請だします」


受付が動く。






 コンコン


雪姫の部屋のドアがノックされる。


「雪姫様、受付より緊急援護要請が来ました。対象はバッカスチーム。難易度A。受付依頼です」


部屋に入るとギャリソンが、雪姫に伝える。




「テレサ、サマンサ!お願い!」


待機メンバーは日によって違う。


今日の待機、テレサとサマンサに指示を出す。




サマンサは、赤いTシャツにホットパンツ。出動は赤いスカーフを首に巻く。


テレサは、ワイシャツにズボン。キャリアウーマンスタイル。出動時には、ローブとお面をかぶる。半魔人であることに、コンプレックスを感じているからだ。




「行ってらっしゃいませ」


ギャリソンから渡された、スカーフとローブ、お面を受け取ると、二人はゲート室へと向かった。






2時間後。二人は戻る。


「雪姫!援護完了だぜ」


サマンサの報告。




バッカスのチームは、ジェシカの予想通り、モンスターと遭遇。


蜘蛛のモンスターは、バッカス達に連絡を入れさせる前に糸で攻撃。


全滅の危機にあった。






ギルドの受付とは、案内だけにあらず。冒険者を守る最前線とした、プロフェッショナルの集まりでもある。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る