第8話

帰りも超特急だ。雄叫びを上げるマックス。


必死にしがみ付く私。何をそんなに急ぐんだよ!!




マックスがばてた。森で野営をすることにした。


野営の装備は持ってきていない。


大きな樹の根元に座り、私はマックスに抱かれるように眠る。


マックスは毛を膨らませ、私を包み込む。モフモフが味わえた♪






目が覚める・・周り一面が白。地平線も空も地面も白。


あ、これ夢だ。


私は、自分が夢を見ていることに気が付いた。


良し寝よう。


私は、もう一度横に成る。モフモフ感がある。私はマックスに抱えられて寝ていることを、実感した。




が・・地面に目がある。目は私を見ていた。・・・・目線が合う。


「初めまして。雪姫ちゃん」


狼だ。白い狼が地面の色と交わって。。。白姫さん?




「起こしてしまったわね。あ、でもここは夢の中。寝ているのに起こすって変よね。あれ、でも雪姫ちゃんは起きてるし・・あれ?」


白姫さんは、指を顎に当て「あれ?あれ?」と、小首をかしげていた。




「あ、あの。これ頂きました」


私は胸にあるペンダントを見せる。


「貰ってくれたのね。嬉しいわ」


なんて神々しさ。見たことの無い笑顔は、後光がさしていた。




「若い子には、もう少し派手な方が良かったかしら?でも、あまり派手になると、品が無くなるし・・でも、おばさんのセンスだと若い子向けではないし・・あれ?あれ?」


今度は曲げた指を口に当て悩んでいた。




面白い人だ!






白姫さんは、私を抱きしめた。


  「もう行くわ。あの人を怒らないで挙げてね」


スケベなところ?かな?






   「雪姫起きろ!出発だ」


超モフモフの白姫さんに抱かれ、夢心地の私は、現実に引き戻された。怒るなとは、この事か?






マックスは、ばてていた。


夕方屋敷に着くと「寝る」と、一言残して部屋に入って行った。


私は、おんぶされていただけで、疲れてはいない・・・いや、そうでもない。結構疲れた感がある。


マリアがお風呂に誘ってくれたので、お風呂したら、少し寝ることにした。




リアちゃんと違い、マリアのボディーは大人だ。


作られた体とは言え、バランスが凄くいい。


勿論リアちゃんと同じ、銀色のボディーだが、いくら食べても変わらないボディーライン。ギア族うらやましか。








「白姫さん、起きてください」


体を揺すられ、私は目を覚ます。23:30!?やはり疲れて居た様だ。


「マスターがお呼びです」


リアちゃんの顔が・・・なんだろう、悲しそうだ。


私はマックスの部屋に入る。




       全員が居た。




「待っていたぞ」


マックは普段と変わらない。が、周りに居る皆は、真剣な顔つきだった。




 「突然で悪いんだがな、俺はもうすぐ死ぬ」




え?・・・なに?それ?


「昔、呪いをかけられちまってな。どじった」


頭掻きながらいう事かよ!


「あと20分と言ったところか?女房の予言だと0:00丁度らしい」


冗談だよね?ちょっと、みんな?




私は周りを見渡すが、みんなは目を伏せ、体を震わせていた。


冗談なんかじゃない。


「3つ目の予言は、俺の死ぬ日時だ」


そうだ。私は2つしか聞いていなかった。


マックスは、わざと3つ目を言わなかったんだ。




「そこでお前に頼みがある。俺に変わってギルドマスターを、引き受けてほしい」


私に?マスターを?なんで?


「お前しかいない。ギルドマスターには絶対の条件がある。


     絶大な力。強力な魔法だ。


あらゆる不利な状況を、一撃でひっくり返す力。ギルドを守る最後の砦。


     それが、ギルドマスターの資格だ。


お前には、それがある」


無理だ。まだこの世界の事を知らないし・・・。




「頼む。お前しかいない。そして俺にはもう時間がない」


時計を見た。23:50!あと10分。




嫌だ、マックスが死ぬ・・私にマスターに成れという。


マックスが死ぬ。死なせたくない。断れない。でも自信がない。


感情が頭を混乱させる。




「すまんな。俺は妻を尊重する。運命に抗うことなく死んだ妻を、俺は尊重したい。だから俺も運命を受け入れ、ここで死ぬ」


マックスは、私を抱きしめた。




    「怒らないで挙げてね」


・・白姫さんの言っていたのはこの事だ。




怒れるはずなんかない。私を大事にしてくれたマックス。


娘として見ていたに違いない。




  「白姫さんにあったよ。夢の中で」


私の言葉を聞くとマックスは、笑った。


「そうか、あいつは心配性だからな。俺が迷わないように、迎えに来ていたんだ」






  「雪姫。時間がない。返事をくれ」


断れる訳がない。事実上の一択だよ。


でも、マックスが望むことだ。一択じゃない。私が選ぶ答えが


  「引き受けるよ。私がギルドマスターに成るよ」


        私の真意だ!








マックスは振り返り旗を持つ。




白の旗。なにも描かれていない真っ白な旗。


が、突然旗が燃え出す。


「!!!」


私が驚くと、旗は勢いよく燃え出した。




「我がギルドフラッグ『不屈の雪』だ。 旗にはギルドの魂が織り込まれている。


特殊な魔法効果で、旗が燃えない限り、この炎は燃え広がることはない。


   白い旗色は雪を表し、炎に包まれても決して溶けない雪。


     我がギルド「スノープリンセス」の魂の御旗だ!」




「スノープリンセス・・・雪・・姫」




「雪姫。気に入らない運命に、身をゆだねるな。お前は、俺達とは違う。戦え、抗え、未来は自分の手で切り開け。負けるなよ。わが娘よ」


「・・・お・と・う・さん・・・」


言葉が自然に出た。




「最後に一番聞きたかった言葉が聞けた。俺の人生は悔いなしだ!


みんな!雪姫を頼む。ありがとうな。たのしかった」




時計の針が0で重なった。




マックスは、笑ったまま逝ってしまった。


すすり泣く声が、聞こえる。


私は笑ったままのマックスを、いつまでも見つめていた。






これが、私、雪姫がギルドマスターに成ったエピソードだ。






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