第6話

私がこの世界に来てから、5か月が過ぎた。


その間に、マリアから世界について教わる。




私たちの居る国は「ルーラン」


ラムタ大陸にあり、人類域と呼ばれる。人間と獣人の国では、ルーランは最大の国だ。




人類以外の域もある。


魔人域、昆虫域。人類域との交流はない。


ラムタ大陸を、赤道付近で分断する大きな渓谷が、人類域と、魔人域、昆虫域の往来を阻んでいる。






人類域には、大小7つの国がある。


ルーランは、王がしっかりしているため、平和な国だという。




ルーランには、ギルドが幾つかある。


マックスのギルドは、6年前から休止していて、ギルドとしての活動はしていない。


この館のメイドたちも、元はギルドの職員だったそうだ。






そして「穴」についてだ。


穴はルーランを含め、人類域で発生する。


穴は、大概は何かを落としていく。


人の時もあれば、動物、物、ゴミや魔王を落とした事もあるそうだ。


でも、問題にはならないものが多い。




逆に落とさない時・・こちら側から何かを拾う。


そして別世界へと運ぶ。戻れるとすれば、その時ではないかと言う。




穴を通ったものは、変化が現れることが有る。


何かを失い何かを得る。私のような場合だ。




失うものは体のパーツから、記憶や五感と様々だ。


得るものは絶大な魔法やスキル。ただ、それを使いこなせない者が殆どだという。




魔法は撃ちたいと思う事で発動する。詠唱などの必要はない。


使う際は、頭の中に浮かぶ、魔法の名前を唱える者が多い。




この簡単さが、仇となる。


魔法の効果、体にかかる負担を知らないうちに、魔法を撃つと、最悪、死ぬことに成る。


レベルと言いう概念がある世界だ。ある程度のレベルに成長していないと、魔法は自身を殺す道具となる。それが強力な魔法やスキルなら、なおさらだ。




私は幸いだった。知識のあるマックスに助けられることで、魔法を撃たなかった。撃っていたら、間違いなく私の転移先は、あの世だった。




5ヶ月で教わったことは、まだまだ少ない。が、後は生活しながら覚えろとのことだ。習うより慣れろ。マリアの方針だ。




体術も頑張っている。


剣士のサマンサは、私に剣の使い方や、護身術を教えてくれている。


厳しいが、大事にされていることは分かる。




魔法に関しては、テレサとドイルから教わっている。


簡単な魔法から、徐々にレベルに合わせ、強力な魔法に移行している。私が持つ最大魔法「アブソリュートスノー」は、まだまだ使えない。




私は、この世界で生きていける自信が付いて来た。


皆のおかげだ。






ルーラン転移半年記念も間近なある日、マックスが、主要メンバーを集めた。


「今晩は宴会を催す!そして明日から3日間、俺は雪姫と出かける」


珍しくメンバーを集めるから何かと思えば、私とお出かけ宣言?


いや、宴会宣言か?


確かに最近マックスとは疎遠だ。


マリアやサマンサ、テレサや、アーロン君とは良く行動を共にしていたが、同じ屋敷に居ても、マックスと行動する事は無かった。


一緒になるのは食事の時ぐらいだ。




私は空気の変化に気が付いた。




おかしい。マリアの顔から、笑みが消えている。


いや、マリアだけではない。全員の顔はこわばっていた。


「マリア?」


私が話しかけると、マリアは直ぐにいつものマリアに戻る。


「今晩は宴会よ。美味しいものを作らないとね」


普段のマリアが居た。他の人たちも普通だ。勘違いかな?






このギルドの人たちは、例外なく酒が好きだ。


ギルドマスターからして、溺れるように酒を飲む。


特に規格外なのがギム。食べ物は一切食べない。一日中酒を飲んでいる。燃費の悪い、アルコール機関で動いているらしい。




リアちゃんやマリアも酒は飲む。


しかも酔う。


体内でアルコールを感知し、行動パターンに変化があらわれる。


機械的ではあるが、人間と共に生活するためには必要な機能だそうだ。体内のリセット機能を使う事で、ヨッパ状態は即座位に解除される。二日酔い機能はないらしい。




アーロン君はお子様だ。


当然ジュースと思いきや、これが結構強い。驚いたことに、アーロン君は齢70歳。この世界に来て成長が止まり、子供の姿のままらしい。小さい体に、じっちゃんの心。


毎週殺人が起こる世界だと、夢のコラボだ。




兎に角荒れる。これがギルドの宴会だ。






その日も、荒れに荒れた。


世界の終わりでも来たかのような荒れ方は、一生忘れることが出来ないほどだ。


いつもは、私とジュースで付き合ってくれたリアちゃんも、飲みまくっていた。ヨッパ共がゾンビの如くマックスに絡む。




酒を注ぎ合い、抱き合い、笑い合う。


宴会は朝まで続いた。


そう・・・一生忘れることの無い宴会となった。








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