第4話

「俺がおんぶする」


「いいえ、私がおんぶさせて頂きます」


これから館へと向かう訳だが、玄関先でマックスとリアちゃんが、私をおんぶする主張でもめていた。




「リアでは充電が持たない。途中で止まりでもしたら、誰が抱えると思う」


「いいえ、計算上は十分足ります。マスターがおんぶすると、妊娠する恐れがあります」


リアちゃんはロボットだ。エネルギーには限りがある。


充電切れで、止まってしまうのは、可哀そうだ。


だが、マックスにおんぶされ、妊娠するのも・・・ってしねぇよ!


おんぶで妊娠はしないよ!




私の意見で、マックスに乗る事に成った。






ここから館までは、険しい山岳地帯を通る。


JKの私でも進める道を通ると、2週間はかかるとのことだ。




私はマックスの背中におんぶされた。


一応安全のためにと、リアちゃんがロープで私を結わえ、反対側をマックスの首に結わえる。


マックスが手を放しても、私は首にぶら下がる訳だ。


「首輪みたいで嫌だな」


動物の本能が首につけられた輪っかを嫌う。




「では、マスターお先です」


リアちゃんが駆け出す。!!早い!


「俺達も行くぞ」


マックスが後を追うが、やはり早い。予想以上の速さだ。




道が有るうちは良かったが、次第に道はなくなり、森の中を進む。


リアちゃんは先行し、進めそうな場所を選びながら走る。


マックスは正確にその後を追う。


小川や、大きな石を飛び越える。障害物競走のような走りだが、スピードは、すごく早い。




マックスの背中、服は着ているので、毛皮のモフモフ間は味わえない。が、広く、温かい背中は、こんな状況でも不安を感じさせない。




「怖くないか?」


時折話しかけてくれるマックスの言葉に、怖さも感じない。






垂直にそびえたつ断崖。


リアちゃんが先に登る。と言うか、飛び跳ねながら駆け上がる。


上からロープを下ろすと、マックスはロープを伝い登っていく。




この二人、コンビネーションがいい。


相談する訳でもなしに、難所と思える場所をクリアしていく。






「ここで少し休憩だ」


山頂付近、と言ったところか?眼下に雲が見える。




リアはシートを広げると、リックサックから、おにぎりの包み、ドリンクを出した。


朝早くに起きたリアちゃんが作ってくれた、おにぎり3つが包まれていた。




私とマックスに、包みを手渡す。


「リアちゃんの分は?」


リアは、自分の分を持っていなかった。




「私は大丈夫です。食べ物から得られるエネルギーは微量です。持ち運ぶことを考えると、不効率になります」


リアは相変わらずの素晴らしい笑顔で言う。


「はい」


私は、おにぎりを1個差し出す。


「効率は分かるよ。でも、食事は皆でした方が楽しいよ」


リアはおにぎりを受け取った。




   「この子はいい子だ」


お互いが思った。






「よし、出発するか?この先、休憩はない。トイレは済ませてくれな」


ああ・・そうだった。


水洗なんか期待しないよ。状況は理解できてる。草むらで済ませるよ。




「ここからは、私がおんぶします。マスターは先行しててください」


またリアちゃんが言い出した。


「でもリアちゃん充電は?」


「大丈夫です。まだ70%残っています。私の充電より、マスターのエロの心配です」


覗くのか?その大きな目で、私のシャーを覗くつもりか?




「油断しないでください。マスターの耳は、1k先のシャーの音を聞き逃しません。マスターの鼻は、1k先のマーキングの匂いも嗅ぎ分けます」


お前も読まれていたか、的な顔するな。




「リアには敵わないな。仕方ない、諦めるか。ゆっくり先行してるから、追いついてこい。慌てて出さなくていいぞ」


余計なお世話だ。


マックスが先行した。




私が草むらに向かおうとする。


「まだです。マスターにつけた発信機は1km未満です」


この子、出来る子だな・・と感じた。








夕日が地平線に傾きかけた頃。


「着いたぞ。あれが俺の屋敷だ」


マックスは指さす。




大きな屋敷。周りは森に囲まれ、洋館の作りで、庭には大きな噴水がある。


「到着の連絡を入れました。到着予定時間は6分24秒後です」


流石はロボ。数字が細かい。




「一応言っておくが、あそこにいる連中は、基本全員、良いやつらだ。が、中には性格に、若干問題のある奴らも居る。


不用意に手を出さなければ、噛みつかれたりはしないから、大丈夫だ。毎日餌を与えれば、すぐ懐くさ」


何を飼ってる?






マックスが正面の門に着くと、左右に居るメイド服の女性が門を開く。


花壇にはバラや、ユリの花。全て白い花が植えられている。


噴水を回り込み、館の中央、玄関へと着く。




「おかえりなさいませ、マックス様」


黒い服に身を包んだ執事が、入り口でリアから荷物を受け取り、挨拶をする。品の良い60歳前後か?JK的には結構あこがれの執事像にぴったりだ。




「皆さま、お待ちかねでございます」


ドアが開かれ、左右に並ぶメイドたちが頭を下げた。




執事もメイドたちも、私を見ない。


視線を一切感じなかった。


来客を目で追う行為は、不敬だ。


私の白い髪は、目を奪うはず。それが無い。


相当教育が出来てると見た。






私たちは屋敷に入る。


高級そうな絨毯の上を歩き、通路を2回曲がる。


立派なドアの部屋。やはりメイドが左右に立ち、ドアを開く。




中には長テーブル。


7人が席についていた。




私たちが部屋に入ると、さっきの執事を先頭に、メイド姿の女性6人が後に続き、左右に3人ずつ立ち並ぶ。




執事はテーブルの横に立つ。


  「ギルドマスターマックス様の御戻りです」


席に座っていた全員が立ち上がり礼をした。






マックスは、ギルドマスター?


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