第3話
「ダメですよ。マスターの口車に乗せられては。この人、スケベなんですから」
私より頭一つ小さく、整った顔つきの少女は、紙袋を抱えていた。
「リア!帰って来たか」
マックスは、紙袋を受け取る。
「幾つか足らないものがあります。発注をお願いしてきました」
どうやら、買い物に行っていたようだ。
リアと言う少女は、ポンチョを脱ぐ。
!!この子、人間じゃない。少女・・の形をした、なにか。
形は人だ。でも、服から外に出ている部分。関節から機械を覗かしてる。
「初めまして、私はリア。マスターの秘書をしている、ギア族です」
挨拶されたのに、驚きが顔に出てしまった。
マックスがフォローする。
「こいつはな、お前の居た世界で言う所の、ロボットってやつだ」
リアは微笑みながら、少女の手を取った。
「怖がらせてすみません。迷い人はギア族を知らないので、大概反応は同じです」
「ごめん」
私が口にした冴えない言葉・・。
「うふ」
リアは、小首をかしげ両肩を持ち上げ、微笑む。
・・・可愛い!
「リア、そいつを風呂に入れてやってくれ」
「かしこまりました。さぁ、行きましょう」
リアに手を引かれ、私は風呂へと向かった。
お風呂と言えば、裸。
私はリアの裸に興味がある。ロボットの裸・・・知的好奇心がくすぐられる。
「脱がないのですか?あなたの世界では脱がせてもらうとか?」
見てるだけの私に、リアは鋭い質問をする。
「いや、あのね・・・」
胡麻化す。とりあえず何か言う。
「皆さん、同じ反応なんです。ギア族に興味が・・・」
リアは、笑いながら服を脱いだ。
まぁ、見てしまえば、こんな感じかな?と言う所だ。
首や手足は肌色だが、体は銀色。
鎖骨の下あたりに、5cm程の縦長な宝石みたいなものが埋め込まれている。
胸はある。二つの丸い肉マンみたいのが付いている。。
臍はあるが、女の子の部分はつるつる。
「いかがですか?」
リアは見せるために脱いだといった感じだ。
「あ~うん。綺麗だね」
正直な感想だ。
「ありがとうございます。では次は・・」
見たからには見せねば、これは女の子同士。恥ずかしいことではない。
さぁ、現役JKの全裸!ご覧あれ!
そう、これは儀式。女の子同士が、初めて一緒にお風呂に入る際の儀式。
リアは、私の髪をきれいに洗ってくれる。
「白い髪・・綺麗です」
私の髪は白色髪。白髪女とあだ名され、幼少のころから苦労した。
でも私は、自分のこの髪が好き。
髪と体を洗うと、私たちは湯船につかる。
「ロボットって・・・いいのか?完全防水?」
「はい。大丈夫です。と言うか、お風呂は大好きです」
笑顔!可愛い!!!
リアちゃん可愛すぎる。
元々、コミュ力には自信がある。
サルとでも、コミュニケーションが取れるレベルだと、自負しているが、リアちゃんの取っ付きの良さは別格だった。
「マスターお先頂きました」
私たちは浴衣に着替えた。
「頂きました。ご馳走様です」
私はお礼を言う。
「さて、俺も入るとするか」
立ち上がるマックスを、リアは両肩を押さえつけ、立ち上がるのを止めた。
結構な力持ちだ。
「お湯を入れ替えます。少しお待ちください」
笑顔だが、なんか違う。
「リア、お前の残り湯は、何も嗅ぎ獲れんが、この若さの女だと、元気が出る匂いが・・・」
リアの回転蹴りが決まる。体を上下に半回転させ、足の甲がマックスの顔に当る。
「ぐは!!」
テーブルに倒れ込むマックス。意識はない。
「マスターの鼻は犬並みです。残り湯を楽しまれては、たまりません」
笑顔だよ。すごくいい笑顔。でも・・怖い。
「・・あいたた」
頬を抑えながら、マックスは蘇った。
「勘違いするなよ。俺はスケベではない。超スケベだ」
はいはい。理解した。
「マスターには気を付けてください。エロが毛皮着ている方ですから」
笑顔だ。常に笑顔だ。
「ギア族にはわからないだろうが、生命体はスケベから進化した生き物だ。スケベなしに繁栄なしだ」
ごもっともですが、風呂の残り湯では、子孫は繁栄しないのよね。
お風呂のお湯が入れ替えられ、マックスも入りに行く。
私はリアちゃんとお茶をしていた。
「親切だね」
当然の疑問だ。見知らぬ私は、半日もかからず、打ち解けていた。
「・・・・」
リアちゃんは答えない。
聞こえない振りをした・・そんな感じだ。
「この世界には、色々な種族が居ます」
リアは突然、話し出す。
「ギア族は少なく、大半は獣人と人間です。マスターは獣人に分類されますが、マスターの獣人の獣は、ケダモノと読み、ケダモノ人族です」
真面目な話かと思ったよ。
「寝る時は、必ず部屋の鍵。窓の鍵も忘れないでください」
おっと、やっぱ大事な話だった。メモメモっと。
「仲良くなったか?」
マックスが来た。頭をタオルで拭きながら・・・裸だ。
股間でブラブラしているモノがある。目線をそらす。
「だから気にするな。俺は獣人、お前は人間・・ぐは!!」
リアの蹴りがブラブラに直撃した。
「男は、見ても見せても罪です」
リアちゃんって、こんなのと一緒で、よく無事だよね。
「マスターは生もの専門ですから。私は自販機ぐらいにしか、見られていません」
私は、リアちゃんなら抱きしめたいよ。
「ギア族専門の方もいらっしゃいます。少数ですが、人間の方との結婚例もあります」
大らかな世界なんだね。
「あたたた。リア、ここはよせと言っているだろう」
マックス蘇生。飛び跳ねているのには、訳があるに違いない。
「ここは全生物共通の急所だ。攻撃厳禁だ」
リアは小首をかしげて笑顔だ。返事はしない。
「全く、子孫を残す大事な球を、なんだと思っているのか?」
ため息のマックスだが、同情はしてあげないよ。
「予定を変える。明日、館に戻る」
マックスは、真面目な顔に成る。
「館?」
ここがお家じゃないんだ。
「はい。ここは町への拠点になります。館は半日の距離です」
「早朝出発。夜までには着けるようにする」
「かしこまりました」
深く頭を下げるリア。
「と、いう事で、今日は寝よう。明日は少し、移動距離が長くなるぞ」
私は部屋を用意してもらった。
ベットが置いてある小さな部屋だ。綺麗に片づけられ、布団もシーツも新品。
私は考えに老けた。
・・・まだ1日も立って居ない。
寂しさはあまり感じない。
親の顔や思い出・・すべてを忘れているせいなのか?
違う。たぶん、マックスとリアちゃんが、私を受け入れてくれたせいだ。
でも、この優しさには何かある。普通に考えて、優しすぎる。
必ず裏がある。でも・・・・今は、その優しさを支えにしなければ、私は生きていけない。
今はまだ、考えないようにしよう。
今はあの二人の、優しさに・・甘え・・て・・・。
疲れから来た睡魔に襲われ、少女は深い眠りへと落ちた。
「寝たか?」
「はい。今日はお疲れでしたから、よくお休みに成れると思います」
マックスの部屋にリアはいた。
「思ったより早く打ち解けてくれた。4~5日はかかると思っていたがな」
「性格のいい子。明るくて、芯の強さも感じます」
「トリプルヘッドウルフに、立ち向かおうとしたんだぞ。あれは良いギルドマスターに成れる」
「はい」
「いずれはお前のマスターに成る子だ。仲よくな」
「はい。心得ております」
2人の会話は、遅くまで続いた。
そんなことは知らない少女は、深い眠りの中に居た。
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