　ノコギリザメが投じた円月鋸輪（バズソー・チャクラム）が、変化球（カーブボール）めいた弾道で少女（アルク）に向かう！　中（あた）れば人体（ひと）などひとたまりもない、死を体現（あらわ）した一球入魂（デッドボール）！

　アルクは飛翔魔法（フライト・プラン）を複雑に組み換えつづけて対処を図る。

　だが、チャクラムの追尾性能（ホーミング）も伊達（かざり）ではない。なにせサメはノコギリの免許を持っている。ひとたび放てばミョルニールめいて必中必殺（ワン・ショット・ワン・キル）、抜かば斬らずにいられない！

　方針を迎撃に変更。指先で刀印（ルーン）を刻めば、噴（ふ）きあがるのは火炎。規模（スケール）、熱量（パワー）、ともに先刻（さっき）の火球（ファイアボール）に数倍する。

　業（ＢａＭＭ）ッ！　灼熱がバズソーを包めば、たちまち金属が融解（メルト）した。必然、飛翔体（チャクラム）としてのバランスを失い落下。

　火剋金（もやせばかてる）――七大系統（セブンカラーズ）のひとつ、《陰陽（Ｙｉｎ　Ｙａｎｇ）》の理（ルール）だ。

　砲撃戦の不利を悟ったか。サメはノコギリの大部分を破棄（パージ）した。

　代わりに得たのは、速度だ。空気抵抗（エアレジスタンス）と慣性（イナーシャ）が、まるで存在せぬかのごとき連続高速戦闘機動（ノンフィジカル・コンバット・マニューバ）！　見る者によっては分身を錯覚しただろう。全霊（フルスロットル）をもってアルクを襲う――ドッグファイト、否、シャークファイトだッッ‼︎