第3話


 男は気がつくと手足が縛られており、口には猿轡さるぐつわがされてあった。耳をすませば雨が降っている音がしたが、見る限り服は少しも濡れていない。



 男は気持ち悪い顔で笑っている。



 男は暗闇の中にいる。そこがどこなのか、全く理解ができなかった。意識が朦朧としている。



 その時、ピシャぁと雷が落ちた。ここは洞穴らしく、雷の光が入ってきた。物の一瞬だったが、男はここの大まかな形とそこの出入り口付近に立っている大男の存在に気づいた。男は全身に鳥肌が立った。大男の目が獲物を狙っている鷲ように鋭かったからだ。



 男は暗闇の中、大男をじっと見つめた。大男は自分を見つめる視線に気づいたらしく、男の方を振り返った。男は暗闇と中、大男からの視線を感じ身震いをした。すると大男は男のそばに近づといきなり男の頬を殴った。その反動で猿ぐつわが取れた。大男は倒れた男の側によると、石で地面に何かを書き始めた。そして大男は男の髪を掴み、強引に座らせ、地面に男の顔を近づけた。読め、ということだろうが真っ暗で男の目には闇しか映らない。大男には見えるのだろうか。男も暗さにも目が慣れてきたものの、それでも大男の体型が薄っすらと見える程度だ。男は、何か話したかったが、怖さで唇が震え、声が出なかった。男は大男に何かを伝えようとせめてもの思いで、頭を横に大きく振った。大男は男を雑に放り投げると、外にでた。大男は察しがいいらしく、数分後帰ってきた大男の手には松明があった。男は眩しさに目を細めた。



 男は初めて大男の顔を見た。さっきは鋭い目にしか目がいかなかったが、今はしっかり見える。大男は何から何まで男とは違った。男は小さく細い体をしており、肌は白っぽい色をしている。あと顔に張り付いている気持ち悪い笑顔。それに対し、大男の顔は茶色く日に焼けており、油っぽい。頬には伸っぱなしの髭、眉は太くつり上がり目は大きく鋭い。目立つ大きな鼻に左頬には大きな黒子があり、ムスッとした顔をしている。くせっ毛らしく髪はクルクルとパーマのようになっている。長さは方より少し長い。体は大きく背も高い。草木や葉を身に着けている。右腰に男の手ほどの削られた石がかけてある。それ以外に服らしきものは身につけていない。  



 

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