第1話
男は木々がたくさん生えている急な山道を登り始めた。もちろん、半袖に半ズボン、スニーカーという姿のまま。山道はザッと見ても十五から二十メートルはあるだろう高さだ。ここのところ雨が多かったため、足場が悪い。男も時々手足を滑らせ転落しそうになる。高さはそこまでないが、落下地点には昔から生えているであろう木の根っこがゴツゴツとむき出しになっている。運悪く、それに当たってしまったら、首が折れ即死は免れないだろう。そんな危険な場面でも彼は笑っている。
男はそれからも何度も手足を滑らせながらも、無事登り終えた。山道の上の平たい場所で、男は土などがべっとり着いた手で肩にかけてある鞄から、五百ミリリットルくらいの水筒を取り出しガブガブと飲み始めた。口の両端から水が溢れているのも気にせずに。彼は満足するまで水を飲み、そこに仰向けに倒れた。フー、と息を吐き出すと、額から流れ出す汗を右の手の甲で拭うと、眠りに落ちた。
男が寝息を立てて寝ている中、一人の人物が森の中を走り回っていた。
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