第118話天高々に振り上げている
そして次にクロード殿下が両親へ感謝の言葉を述べ、わたくしと同様に両親を泣かせたのだが王妃様がわたくしの母以上に泣きに泣き、
その後は来場者、主に女性達から花々を頂くと、頂いた代わりに今度はわたくしから花束を返す。
しかし花束は一つしか作られておらずその事を疑問に思った所でクロード殿下から「これを前に群がっている未婚のゲストたちへ投げて、手に入れたものが次に結婚できると言われている『ブーケトス』というものである」と花束が一つだけしか用意されていない理由を教えてくださる。
しかしクロード殿下、耳に口がついてしまう程近くで喋らなくとも聞こえますわっ!!
あまりの幸福感と恥ずかしさでまた記憶が途切れてしまいそうになるのをグッと堪え、未婚である令嬢達へとブーケを投げる。
その瞬間羊達だったはずの淑女達が魔物に変わりブーケを奪い合う光景が目の前に繰り広げられ、拳や魔術が飛び交う中シャルロットが皆に見せつけるが如くブーケを天高々に振り上げている姿、そして舌打ちをする淑女達の姿が目に入って来た。
この光景は、皆様淑女たちの為にも記憶の奥底へしまった方が良さそうですわね。
因みにクロード殿下は「魔術まで使うとか………」と呟き若干引いていた様に見えたのだが次の瞬間にはシャルロットを称えていたのできっと見間違いの聞き間違いであろう。
そして淑女達はスカートを払うと皆澄ました顔で何事も無かった体を装い元いた場所へと戻って行き、その中の一人はブーケを抱きしめニヤニヤとしながら足取り軽く戻って行った。
そんなこんなで幸せな時間はあっという間に終わりを告げ国王陛下、次いでクロード殿下が代表として謝辞を述べるとわたくし達はこの場を退場する。
そして向かうは会場出口。
そこにて今日の為に用意した来場者たちへのささやかなギフトを用意し、退出してきた者へと感謝の言葉と共に一人一人渡していく。
そしてわたくしは思う。
これ程までに幸せな結婚式をする事ができたのは世界広しと言えどわたくしだけだと、クロード殿下がわたくしの為に考えてくれた披露宴を振り返りながらそう強く思う。
まごう事なく、今世界で一番幸せだと言い切れるのだから。
そしてこの披露宴が王国中に広まるのだが、婚前旅行と共に末永く語り継がれるのであった。
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