第117話泣き崩れてしまった

そして二人で扉を開けて会場に設けられている、最奥にある他とは二段程高くセットされたわたくし達の席へと、鳴りやまない拍手と祝福の言葉を浴びながら歩んでいく。


そして披露宴は司会者により開会され、わたくし達の説明、そして両家の説明を簡単に行った後クロード殿下の主賓、そしてわたくしの主賓それぞれ一名ずつスピーチをして行くのだが恥ずかしさや幸福感、そして緊張感など相まって、彼らには悪いのだが内容が一言も入って来ないのは致し方ない事であろう。


その代わり誰がスピーチしてくれているのかをしっかりと覚え、後でお礼を言わなくてはと心にメモする。


クロード殿下の主賓は現近衛兵隊長であるルーゲル・ドドリアスなのだが、例の事件後の任命である為隊長として間もない彼に箔をつけるという事も想定しているのであろう。


因みにわたくしの主賓はシャルロットのお父様であるのだが、既に酒を飲んで酔い始めており顔がほのかに赤く、そして泣き上戸なのかまるで自分の娘が結婚しているのでは?と思ってしまう程の嗚咽と共にスピーチをしてくれた。


これが挙式であれば無礼であるのだが、逆にこういう光景が見られるのも披露宴の良さでもあるのだろう。


それが終わると食事が運ばれ、各々王城の料理長の料理に舌鼓を打った後ケーキを二人で一緒に切るという催しをしてひと盛り上がり。


司会者による『初めての共同作業』という謳い文句がさらに場を盛り上げていた。


それが終わると場が温まりお腹も満たされた所でお色直しで一旦退室し、雑談という名の各貴族達の挨拶巡りが始まると共に王国お抱えの音楽隊の生演奏が始まったのか化粧室まで聞こえてくる。


そしてお色直しが終わり、各テーブルへ挨拶をしつつ席へと戻るとゲストたちの余興が始まる。


お祝いの言葉を手紙にしたためた者から演武や演奏など各々の得意分野を披露する者、酔いが回り千鳥足で何かをしようとし笑いを掻っ攫う者、逆にガチガチに緊張してしまっている者等がいて余興としては十分すぎる程楽しめたと言えよう。


その後は打って変わってわたくしによる両親への感謝の気持ちを綴った手紙の朗読である。


正直な所素直に感謝が述べる事ができるのかと言えばそれは難しいのだが、けれどもここ最近ではあるものの愛情を感じ取れた事等を素直な気持ちで述べて行くと、気が付けばお母様が泣き崩れてしまっていた。


その姿を見て来場者のお涙を誘い、そこかしこですすり泣く音が聞こえてくるのだがわたくし自身もお母様の姿を見て、ずっと我慢していた涙腺が崩壊し泣き崩れてしまったのは許してほしいと思う。


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