第116話誰に似たのかしらね
◆
次の会場は王国でも有名な高級ホテルであった。
その入り口には数キロにも渡り国民が両端からお祝いの言葉をかけてくださり、それはまるで一種のお祭りであるかの光景のようである。
恥ずかしさと、それと同等以上の嬉しさと、そして王国の子供たちでもあるこの国民たちの笑顔がクロード殿下、そしてわたくしの背中にのしかかってくるという重圧が彼ら彼女らを見るにつれてのしかかってくる。
国民たちがわたくしへ満面の笑顔で今手を振ってくださっているのは現国王や先代、そのまた先代達が作ってくださった平和ゆえであろう。
そんな彼らに微笑み手を振り返してあげると『わぁっ!』と歓声が大きくなる。
そんな国民たちを見てわたくしはきゅっと強く手を握り、これから妃となるのだという事を肌で感じると共にこの光景を息子または娘の世代にも壊したくないと強く思いながら会場となるホテルの敷地内へと馬車は入って行くのであった。
◆
「先ほどまではどこか幼さがあったのだけれども、今のリーシャさんなら私も胸を張って王家へと送り出せますわね」
ホテル内の控室。
お色直しも兼ねて衣装を新しい物へと手慣れたメイド達の手によって着替えて行く。
そんなわたくしを見てお母様が扇子で顔を口元を隠しながら言うその内容は、今までの私も、これからの私も肯定してくれる、そんな内容であった。
その言葉に思わず涙が溢れ、我慢しようとすればするほど両の目から溢れ出ててくる。
「まったく、その涙もろさは誰に似たのかしらね」
そしてお母様がわたくしの背中を優しくさすりながらハンカチを手渡してくれるのだが、そのお母様の目も真っ赤になっているのは見なかった事にしよう。
そんなこんなで準備も終わると披露宴の会場へと向かい、扉の前で合図が来るのを待つのだが挙式程の緊張感は無く、この幸せな一日を噛みしめるだけの余裕もある。
ちなみに扉の向こう側は芝生の緑が美しく広がる、広い庭であり挙式の倍以上となる来場者全員が余裕で入れるだけのスペースはある。
そしてその庭をし切る柵の向こうには国民たちが一目見ようと警備員たちと押し問答を繰り返しているそうだ。
そう教えてくれるのはわたくしの隣に立つクロード殿下である。
あぁ、その眩いお顔を(主に唇その一点)一目見ただけで幸せを噛みしめる余裕は無くなり顔がみるみる真っ赤になって行くのが自分でも分かる。
でもこれから徐々に慣れて行くのだと思うと、それはそれで幸せだなーと思ってしまう。
だってそれは、キスに慣れてしまう程これからクロード殿下とキスをしていくという事なのだから。
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