第114話後でお仕置きですわね
そしてついに挙式が厳かな雰囲気の中始まる。
列席者入場、司式者入場、開式の辞と滞りなくスムーズに進んでいくにつれわたくしの心臓が激しく脈打ち始め、緊張のあまり気持ち悪くなってくる。
しかしながら挙式はわたくしの体調などお構いなしに進んでいき、クロード殿下が入場、参加者が一同は起立する音が聞こえてくる。
聖壇前で新婦であるわたくしをこの扉の向こうで皆が待っていると思うと口から心臓を吐きだしそうになる。
「大丈夫、大丈夫」
そんなわたくしの頭をお父様が大丈夫と声をかけてくださり、優しく頭を撫でてくれる。
幼い頃、どれだけこの優しさを欲したであろう。
それら全てをわたくしに与えてくたクロード殿下が、わたくしを扉の向こうで待っていると思えば自然と緊張感は無くなり、むしろ早くクロード殿下の妻となりたい欲求の方が強くなってくる。
これら目の前の、わたくしを緊張させる物事がクロード殿下と結ばれるための一つの障害であるのだとすれば、そんなものなど取るに足らない些末な事の様に思えてくるから不思議である。
「ありがとうございます、お父様」
そしてわたくしはお父様へ感謝の言葉を言うと微笑み返す。
そのわたくしの表情を見てもう大丈夫だと思ったのか父上の表情もそこはかとなく和らいだ様な、ほっとしたような表情をしたように見えた。
きっとそれは気のせいではないだろう。
そしてお父様は肘を出し、そこへそっとわたくしは手を添えると目の前の扉を開く。
すると挙式に呼ばれて参加した貴族の方々から「わぁっ」という声が聞こえ、一拍置いた後満面の笑みと拍手でわたくしを出迎えてくれた。
あの、幼かった頃のわたくしへ今この光景のが近い将来訪れると申してもきっと信じてはくれないだろう。
そう思うと何故だか無性に泣きたくなったのだが皆様が見ている手前涙を見せる事は決してしないと唇を噛みしめ、少しだけ上を向き歩き始める。
そしてその先には絵本に出てくる純白の王子様の衣服の様な、白と金、そして勲章で飾られた軍服の様な衣服を着たクロード殿下の姿が見えた。
そこに見えるこの王国の、そしてわたくしの王子さまはどの絵本に出てくる王子様よりもかっこよく見えた。
そのクロード殿下と目が合った瞬間、わたくしの大好きな微笑みで返してくれて思わず腰が砕けそうになる。
クロード殿下の妻となるわたくしの晴れ舞台で思わず失態するところでした。
後でお仕置きですわね。
わたくしが良いというまで微笑んでもらおうと心に誓う。
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