第106話わたくしの方が

タガが外れるというのは今のわたくしの様な事を指して言うのだろう。


こうなってくると今まで溜め込んでいた分、止まる事も止める事も出来ず自らの思いの丈を気が済むまで吐きだし続ける事しかできなかった(後で側仕えのメイド達から『まるで口から砂糖を吐いている様でした』と言われたのはまた別の話である)


「で、ですからっ!!わたくしはクロード殿下の事が、好きで好きで好きすぎてどうにかなってしまいそうなんですのっ!!」


好きすぎてどうにかなってしまいそうなんですのっ!!


どうにかなってしまいそうなんですのっ!!


しまいそうなんですのっ!!


なんですのー


のー


木霊するわたくしの言葉に、わたくしは思わず我に返ってしまう。


そしてどこかに放り捨てていた羞恥心という感情が無事に帰って来てくれたようで、見る見るうちに恥ずかしさが襲い始めて来るのであった。





効果音を付けるとするならば『ボンっ!!』という音が付きそうなくらい、自らの愛の叫び声により我に返ったリーシャの顔は一瞬にして真っ赤に染まっていく。


それにより固まってしまった為小一時間程続いたリーシャの告白もようやく終わり、小鳥たちの「チチチ」という鳴き声が聞こえ始めてくる。


「そうか。それ程迄に思われているとは知らなかった。我は幸せ者であるな」

「あっ、あぅっ、その、あのっ」


そしてやっと俺の会話のターンが来た為素直に思った事を伝えるとあたふたしながら『ボボボボッ』と更に赤くなり握っている手は熱くなっていくのが分かる。


「わっ、わたくしも………わたくしの方が幸せ者でございます………っ!!」

「………っ!そ、それは良かった」


だからこそ油断していたのであろう。


まさかここでリーシャが返して来るとは想像していなかった為がら空きのボディーへクリティカルヒットを喰らってしまった。


恐らく、いや、確実に今の俺は顔を赤く染めている事であろう。


前世と合わせて最早おっさんの域となる俺を赤面させる程の攻撃をされたのだ。


少しばかりやり返したくなってしまうのは致し方ないだろう。


それに、リーシャの反応も見てみたいという欲望もある。


「はいっ!!わたくしの方が幸せ者ですわっ!」


そして俺は満面の笑顔を咲かせるリーシャへ、先ほどの告白の返事を、いかにリーシャの事が好きであるかというのを同じ位長く返していく。


その時リーシャは嬉しさと恥ずかしさが許容値を大幅に振り切ってしまったのか逃げようとしたのだが、当然逃がす筈も無く、固く握った右手だけでは心もとないとリーシャの肩を抱き、そのまま抱き寄せて返事の続きをリーシャの耳元で言って聞かせるのであった。




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