第105話次から次へと溢れ出る

そしてクロード殿下は密着するだけではなくわたくしの右手を掴み、握る。


それだけで私の体温は急上昇してしまいまともに思考する事ができなくなってしまうのだから、我が事ながらしっかりしろと言いたい。


初めてクロード殿下と出会った時も、手を握られて体温が急激に上がって行くのを今でも鮮明に覚えているのだが、今ほど激しく、そして急激に上がらなかった事も憶えている。


その思い出の場所も、今この場所と同じように花々で囲まれており、クロード殿下と二人で散策した事を、まるで昨日の事の様に思い出す。


しかしながら今日のクロード殿下はいつもと違い、わたくしに話しかけて来る事はしない。


その事が『手紙を読んでここに来た』という事の何よりもの証拠であろう。


それを意識してしまうともう駄目だ。


逃げ出したい。


そう思ったところで今わたくしの右手はクロード殿下に握られている事に気付く。


ある意味これはクロード殿下の優しさであり、頑張れというエールなのだろう。


口にするには無粋ではあるけれども間接的に伝えたいというクロード殿下のお気持ちが握った手から伝わってくる。


それがたまらなく嬉しいと思ってしまうのと同時に勇気もわいてくる。


クロード殿下が味方でいてくれるのならばわたくしはいつだって百人力である。


それでも、一歩踏み出すという事はいつだって何事においても難しいわけで。


そうこうしている内にクロード殿下が来てくれてから小一時間が経ってしまう。


「あ、あの………」

「………うん?」


そしてわたくしは無言ではあるもののどこか心地よい時間に終わりをつげ、それにクロード殿下が優しく微笑みながら返してくれる。


「わたくしは………その……あの………」

「うん」


喉が急激に乾き張り付く。


手汗が凄いかいている様に感じる。


周りの音が聞こえなくなり、クロード殿下以外の景色が見えなくなる。


酸素が足りず、倒れそうになってくる。


緊張感が振り切れてしまい、意味も無く涙が出てくる。


それでも。


それでもわたくしはクロード殿下に自分の気持ちを、自分の口で伝えたいのだ。


「わたくし、リーシャ・リプルトン・クヴィストは………クロード殿下の事を…………その………」

「うん」

「お、おお、お慕い申しておりますわっ!!出会った当初からわたくしはクロード殿下の事が気になっておりまして、その気持ちが『お慕いしている』という事に気付いてからはより一層クロード殿下の事をお慕いしている気持ちが膨れ上がって行き、わたくし自身ではもう止められない程にまで膨れ上がっておりますのっ!!それからっ、それからっ────」


一度言ってしまえば、後は今まで言えなかったのが嘘であるかのようにわたくしの想いが、こんなにもお慕いしているという気持ちが言葉の滝となって口から次から次へと溢れ出る。





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