第99話泣きながら謝罪をしてくる
しかし、アイリーンも命を今懸けて妊娠しているのである。
ここはぐっと堪えてアイリーンを宥めた後疲れた身体に鞭を打ち晩御飯の調理へと取り掛かる。
時間も期間なのであまり時間がかからない方が良いだろうと思い棒状の乾麺を取り出しお湯を沸かす。
「そう言えばアイリーン、その服はどうしたんだ?」
「あぁこの服?可愛いでしょっ!!お腹が大きくなってきて着れる服が少なくなってきたから買っちゃったっ!!妊婦用なんだってーっ!でもこの少し大きなワンピースみたいな服一着で銀貨二十四もしたんだから驚きよねっ!でも種類は豊富にあったからとりあえず全部買ってきちゃったっ!!」
アイリーンのその言葉に俺は眩暈と冷や汗が止まらなくなる。
「そ、そのお金はどっから………?」
そしてこの一言だけ震えながらもなんとか絞り出す事ができた。
今程アイリーンの返答を聞きたくないと、そして俺の悪い予想が外れてくれと思った事は無い。
「お金?何かお金タダでくれるって優しい人がいてね、その人から貰ったの。何だっけ?利子が十日で二十とか言ってた様な気がするんだけど何なんだろうね。難しい事とかいいからさっさとお金を渡しなさいよって思わない?それでねーってどこ行くのよっ!?痛いっ!!引っ張らないでっ!!」
「お金を今すぐ返しに行くのに決まってるだろっ!!そのお金は借金なんだよっ!!そもそも利子が十日で二十って何だよっ!行きたくはないが違法ならば衛兵の詰め所に寄らないとっ!あぁもう糞がっ!!まずどこで借りたか詰め所でしっかりと説明しろよっ!!」
結果、俺は貯金額全て綺麗に消え去り、闇金の胴元は捕まり、借りている部屋でボヤが起きて大家から叩き出された。
違法な金貸しという事で利子が無くなったのだけは有難いし、返金したお金も国の為に寄付したと思えば気休めくらいにはなる、と何とか噴き出しそうな感情を堪える。
「ご、ごめんね!?怒ってるっ!?そんなつもり無かったのっ!」
ようやっと事の重大さに気付いたらしいアイリーンは泣きながら謝罪をしてくるのだが、泣きたいのはこっちだと叫びたい。
しかしアイリーンも日に日に大きくなっていくお腹に不安が募っていっているのだろう。
俺の甲斐性無しさに申し訳なさが込み上げてくる。
「起きてしまった事は仕方ないよ。次失敗しなければ良いんだから」
そして俺たちは王都で暮らすにはその日ばかし程の日銭を握りしめ、只で商人の馬車へ乗せてもらう代わりに護衛をする契約を結ぶと王都をはなれて田舎へと移動する。
田舎ならばその金額でも何とか一週間は持つだろう。
水代、薪代、食事代、家賃等々。
王都で暮らすには何かとお金がいると言っていた、田舎から来ていた元同僚の言葉の意味を今、理解する。
何より田舎ならばアイリーンを誘惑する物も少ないだろうし討伐系のギルドの仕事も多いだろう。
そう思いながら折れそうな心に気付かないフリをし、商人の荷物に埋もれながら馬車に揺られるのであった。
◆
「わぁーっ!!クロード殿下っ!!見て下さいましっ!!雪っ!雪がこんなにも積もっておりますわっ!!」
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