第98話【新婚二人の近状】開口一番聞こえてくる

甘い物には苦い物を(*'▽')どぞー

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冒険者の朝は早く、そして基本的には夕暮れと共に日が沈む前に帰宅するのが一般的である。


クエスト中に野営をする冒険者などまずおらず、いたとしても目的の素材または獲物がいるところまでの整備された道を行き、途中にある休憩宿の様な場所または小さな村を転々とするのが普通であると言える。


しかしながらそれらはあくまでも基本的な行動という事であり野営を禁止している訳ではない為数は少ないものの冒険者の中には野営をして纏まった素材が採取出来れば帰るという者がいるのもまた事実である。


この利点は帰宅する時間を採取に割けれる為効率が非常に良いという事と、宿代を浮かせる事ができるという点であるが、デメリットは自分の命である。


その為野営をする者は一気に稼いで軌道に乗りたい若者、力自慢の者、金に困っている者、自分の力を試したい者等様々であるが基本的に一年も経てばその半数以上が行方不明となっている事からいかに危険であるかが見て取れる。


そして俺はというと、どちらかというと金に困っている者の中に含まれるのであろう。


アイリーンのお腹はみるみる大きくなり、来月中ごろが出産という診察結果を街の産婆から出されている為尚の事産まれてくる子供の為にも稼がねばという気持ちが大きくなってくる。


自分の予想ではアイリーンの出産はあと二ヶ月程先だと思っていたためほんの少しばかし計算が狂った穴埋めを今こうして文字通り命を懸けて稼いでいる。


そして俺は一週間の野営も何とか騎士団で得た知識を生かして乗り越え、溜まった素材を換金所へと持って行き、素材を現金へと変えてもらうとギルドヘ向かい、顔馴染みになって来た他の冒険者達やギルド職員達に挨拶しながら一番安い水のシャワーで身体についた一週間分の汚れを落とすと、ようやっと家路につくが正直帰りたくないというのが本音である。


「帰ったぞ」

「遅いっ!!妊婦を放って何日家を空けているのよっ!!私の事が大事じゃないのっ!!」

「ごめんよアイリーン。でもこれも全て君と、これから産まれて来る子供の為なんだ。分かってくれよ」

「分かるはずがないじゃないっ!!意味わかんないんだけどっ!!普通は妊婦が一番じゃないのっ!?」

「勿論アイリーンが一番だ。しかしだからこそ────」

「言い訳何か聞きたくないっ!!」

「分かった、分かったから。次から気を付けるよ」

「嘘ばっかりっ!!どうせ他所で女を作ってるんでしょっ!?」


家の扉を開くと俺の妻から開口一番聞こえてくるのはいつも通り甲高い罵声であった。


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