第100話【冬編】ギルティ

リーシャには珍しく、よほど興奮しているのかまるで子供の様にはしゃぎながら雪の上を走り回り、足跡を刻んでいく。


因みに今現在、王都の最北部にある別荘へ来ている。


あのあと一週間ほど滞在後、雪が積もって動けなくなる前に移動し、今の別荘へと移り二週間が経ってようやっと雪が降ってくれた。


今年は例年と比べて少しばかり初雪が遅かったみたいであるのだが、その分一気に降り、朝目覚めてみれば辺り一面銀世界、約十センチは積もっているのではなかろうか。


本日は昨日の天候が嘘の異様に晴れ、風も無く雪で遊ぶには絶好の日であるのだが、それはそれで雪が降っていないのが少しばかりリーシャは残念がっていた。


昨日の晩は外に出ても良いか?せめて窓を開けても良いか?と側仕え達を少しばかり困らせてしまう程楽しみにしており、翌日雪が止んでどうなる事かと思ってはいたのだがどうやら取り越し苦労だったようである。


「ふはははははっ!!当たらぬっ!!当たらぬぞシャルロット嬢っ!」

「ぐぬぬぬぬぬっ!!殿下の犬の分際で生意気ですことよっ!!黙って顔面に当てさせなさいなっ!!」

「そうやって顔面ばかり狙っているから当たらぬのだぞっ!!バレバレではないかっ!」

「ちょこまかと、猪口才なっ!!こうなったら奥の手をぶへっ!?」

「…………あー、すみません。本気でシャルロット嬢の顔面に当てるつもりは無かったのです……よ?本当ですよ?」

「…………………………ギルティ、ですわぁぁぁぁぁぁああっ!!!!メイド部隊全総力を持ちまして叩き潰させてあげましてよっ!!」

「え?あの、それは流石に卑怯では?は?他の草達は殿下の護衛をするので参戦はしない?そもそもメイド達の怒りを買いたくない?お前一人でどうにかしろ?」


そして奥の方では我が草であり影でもある者とシャルロットが楽しそうに雪合戦をしているのが目に入る。


うむ、今日も若干一名の悲鳴さえ聞かなかった事にすれば実に平和である。


そして、この光景を見てなんだかんだでこいつら仲が良いのでは?と思ってしまうのだが、以前その事を二人に聞いてみるとお互い全力で否定していたので恐らく俺の気のせいであろう。


「殿下っ!!早くっ!早く来てくださいましっ!!」

「そう急がなくても雪は逃げぬぞ、リーシャよ」

「ですが、こうも太陽の日に当たってしまわれますと溶けてなくなってしまうかもしれませんわっ!!」


確かに王都では偶に雪が降ってもすぐに溶けてしまい積もる事は希なためリーシャが言わんとしている事も分かる。

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