第96話何よりもの収穫

ちなみにキノコ類の収穫は、素人目では完璧に判断できない為禁止である。


「殿下っ!クロード殿下っ!!いっぱい実が成ってますわっ!」

「おお、それは良かったな」

「はいっ!!」


それでも道中様々な木の実や野イチゴの様な物が実っておりリーシャは存分に楽しんでいるみたいで何よりである。


その満面な笑顔が俺にとっては何よりもの収穫であるのは秘密である。


「うーん、不味くは無いのですけれども市場に出回っている物と比べると甘さも味もいま一つと言った所ですわね」

「でも色々な形や味が楽しめて面白いですわよ?シャルロット。ちなみにわたくしはこれが今のところ一番好みですわ」

「あ、確かに美味しいですわね。ジャム等にしたいくらいですわ」

「ジャムっ!!良いですわねっ!!日持ちも致しますし、家族のお土産に何個か作ってあげてもいいかもしれませんわっ」

「ですが、出来るだけ美味しい実を選びたいのですけれども、同じような色合いでも酸っぱい物もあってどれが熟しているかを見極めるのが意外と難しいですわね。それはそれで楽しいのですけれども、子供たちはどれが美味しいのか簡単に見極めておりますので何だか悔しいですわ」


確かに市場に出回っている果物達と比べると品種改良等されていない野生種等は実も小さく味も薄味だったり渋みや酸味が強かったり、実によっては見た目は似ていても味の違いが大きく選別は難しいであろう。


しかしながら大人になるとこの薄味だったり若干の青臭さがある方が好むようになる者もいるのだと俺は前世の頃を思い出す。


大人になるとメロンよりも真瓜、熟した柿よりまだ渋さの残る柿等、甘さよりも優しさや苦みを求め始めるものでる。


いつからだろうか?あの大っ嫌いだったピーマンを美味しいと思い始めたのは。


そして、姦しい女性達の声を聴きつつ前世の思い出を懐かしみながら徒歩で三十分ほどの山道を二時間かけてようやっと目的の場所へと到着する。


因みにリーシャやシャルロットの籠の中には既に半分は道中取って来た木の実類で埋まっていた。


「立派なイガですわね、リーシャ様」

「イガを入れた焼きたてのパンを想像すると、はしたないのですけれども涎が溢れて来そうですわね」


シャルロットの言う通り辺りに落ちているイガ達は確かに大きく、栗ご飯ならぬイガご飯にしたら美味しそうだなと思う。


そして俺はこの日の為にうるち米をわざわざこの別荘まで取り寄せているのである。


更に昨日、俺の草達数名で川魚及びマスコ(鱒イクラ)を取ってくるように命令しており今現在一日塩で漬け込んでいる。

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