第94話暗殺者
ちなみに去年訪れたのは俺の腹違いの弟であるベルホルトと母君である。
彼らは良く王家所有の別荘を利用しているのだが、それはそれでこの様に彼ら管理人達のやる気と下手な仕事は出来ないという緊張感を与えているので、この点に関して言えば役には立っているのだろう。
しかしながら癇癪持ちで気難しい弟とヒステリックを度々起こすその母君の相手をするのだ。
管理人達や側仕え達の気苦労を考えれば頭が上がらない。
むしろ俺の弟が役に立っている箇所などこれくらいの様な気もするのだが、深く考えると悲しくなるので考えるのは止めにする。
せっかくリーシャと訪れているのだからもっと楽しい事を考えるに限る。
「ささ、お入りください」
「「お入りくださいっ!!」」
そして管理人である男性に荷物を預けて別荘の入口へと移動するとその妻であろう女性と兄と妹であろう二人の兄妹が出迎えてくれる。
その案内に従い別荘の中に入ってみるのだが、何だろう。
今この場所に金田〇という名字や、コ〇ンという珍しい名前の子供が同席していた場合間違いなく密室殺人が起こりそうな雰囲気は………。
いや、さすがに考えすぎであろう。
見かたを変えれば暖炉や絵画、鹿の首等が飾られた趣のある良い別荘ではないか。
そう、この時俺はそう思っていたのだが嫌な直感と言うのは当たるものである。
そんな未来が待っている等つゆ知らず俺はリーシャと共にジビエ料理に舌鼓をうち、星空を満喫できる露天風呂を堪能したり、秋と言えど山の夜は寒く暖炉の前で暖を取りながらリーシャ達とトランプに興じてみたりと別荘ライフを楽しんでいた。
そして翌日、目が覚めた俺は山特有の澄んだ空気を肺一杯にいれ深呼吸をすると朝風呂に入ろうかと浴槽がある場所へと向かう。
「この世界で朝から風呂は贅沢の極みであるな………っと……………っ!?」
そして俺は見つけてしまう。脱衣所で倒れている血だらけの我が草であり影でもある者が倒れている事に。
「お、おいっ!?どうしたっ!?大丈夫かっ!?意識はあるかっ!?」
「う、………で、殿下……す、すみません。下手しました………っ」
「っ!?お前程の腕を持つ者が、一体誰にっ!?」
まさか、俺の腹違いの弟であるベルホルトが仕向けた、我が影すら倒せる程の腕をもつ暗殺者がこの別荘に潜んでいるとでもいうのかっ!?
そこまで考えた時、俺は一気に頭かあ血の気が引いていくのが分かった。
もし万が一ベルホルトが暗殺者を仕向けていた場合、リーシャが狙われている可能性だってあるのだ。
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