第93話記念日
あぁ、何と愛らしい事か。
こんなにも愛くるしい女性が俺の婚約者であるのだ。
もはや国民にすらこの可愛さを伝えなければならない気がしてきた。
そうするにはどうすればいいかと考えたとき、俺は一つの方法を思いつく。
それは今日この日をリーシャの日として国の記念日の一つにしてしまうのはどうだろうか。
王都に帰ったらばさっそく父上に相談してもいい気がする。
「なぁリーシャよ、お主はどう思う?」
「だ、だめですわっ!そんな記念日が出来てしまってはわたくしは恥ずかしくてもう国民の前に立てなくなってしまいますわっ!!やめてくださいましっ!!後生ですからっ!!」
しかしそんな俺の提案をリーシャに聞いてみると顔を真っ赤にして辞めるよう言ってきた。
少し冗談のつもりだったのだがリーシャは俺が本気であると捉えたのか顔を真っ赤にしながらアタフタする光景がまた可愛くてついついまたいじめたいと思う感情を心の奥底においやる。
確かにこの慌てふためくリーシャも可愛いのだが、やはり俺は心から楽しんでいるリーシャや、嬉しいと思っているリーシャの表情を見ていたいと思うのであった。
ちなみにリーシャの記念日なのだがリーシャさえ問題がなければ作っても良いと思っていたのは内緒である。
◆
「やっと着きましたわ、リーシャ様」
「意外と時間がかかりましたわね」
そんな事を箱入り娘である女性陣二人がきゃいきゃいと喋り始める。
何が可笑しいのか道中のかかった時間やその時々の出会った動植物たちの話でころころと笑いあっている。
箸が転がるだけで笑う年ごろなのだろう。
その光景を映写魔術球に収めるよう目線で草達に伝える。
後日王都に戻ってからがの楽しみが着実に増えている事に思わず笑みが零れてしまう。
しかしながら馬車で麓から八時間ほどかかる場所にある別荘であるため山の頂上というよりかはまだまだ中ほどといったところであろうか。
もしこの世界に車があったとしたのならば二時間ほどで着く程度の距離である。
それでも結構な高さまで来たのか空気が澄んでいる様に思える。
「では、荷物はいったん預かりましょう」
「うむ、よろしく頼む」
そしてこの王家が所有している別荘の一つを管理している管理人へと一旦荷物を預けていく。
この管理人はめったに来ない王家の為にこの別荘を代々管理してくれており、そして今、約一年ぶりの仕事、それも第一王子とそのご婚約者の宿泊ということで側から見ても分かるくらいやる気が漲っているのが手の取る様に伝わってくる。
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