第90話【秋編】私利私欲は一切関与しておりません
リーシャ様が私以上に厳しい環境下で育って来た事は既に分かっているので、あの環境下であれば自分のお気持ちを相手に伝えるという事に足踏みしてしまう性格に育ってしまうのも致し方ない事であったと今でこそ、そう思う。
いま目の前で雨に打たれた子犬の如き瞳で「でもでもだって」と仰っているリーシャ様が何よりもの証拠である。
そして私は「仕方ありませんね」と呟くとリーシャ様へ一つ提案する。
「それではリーシャ様、リーシャ様さえ宜しければ私が、自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手という状況を、少しでも改善できるようにこのリーシャ様一の側仕えであるシャルロットと一緒にリハビリをいたしませんか?」
「は、はいっ!!それはとっても心強い事ですわっ!まさに鬼に金棒とはこの事ですわねっ!」
そしてわたしの言葉を聞き、その内容を理解した瞬間リーシャ様は私に抱き付いてくる。
あぁ、このまま抱きしめて頭を撫でくりまわしたいですわっ!お父様、お母様ここは天国と地獄、どちらなのでしょうっ!?どちらにせよシャルロットは今大変幸せでございますっ!!
「で、ではリーシャ様、私の事は好きですか?」
そして私はリーシャ様が自分から離れてくれるまでの五分間を何か耐え凌ぎ、さっそくリハビリの為行動を移す事にする。
一応このリハビリに関しましては、私の私利私欲は一切関与しておりません事をここでご報告させて頂きますのでご理解ご了承の程何卒宜しくお願い致しますわ。
ええ、決して。
「そ、それは………いつも良くして頂いておりますし、感謝はしておりますよわよ?」
「ありがとうございます。で、もう一度お聞きいたしますが私の事は好きなのですか?どうなのですか?」
「それは………そのぉー………あの、す、すきぃー………だと思いましてよ?」
あざといっ!あざと可愛いっ!!何なんですのこの可愛い生き物はっ!?はぁ、もっと好きと言われてみたいですわっ!!
「…………んっ!!、疑問形ではございますが同性であり恋愛ではなく友愛としては何とか言えるみたいですわね。ではこのまま疑問形ではなく、しっかりと言い切れる様に毎日練習していきましょうか」
「そ、そうですわねっ!流石シャルロットっ、何だか自信がついてきましたわっ!わたくしの方からもお願い致しますわねっ!!」
あぁ、このままでは私は幸せの接収過多により死んでしまいそうですわね。
◆
秋に入り少しばかり肌寒い秋風が俺の頬を心地よく撫でてくれる。
「あ、リーシャ様っ!あそこに角猿の群がおりましてよっ!!」
「本当ですわねっ!!あっ、あの猿赤ちゃん猿を抱っこしながら歩いておりますわっ!!」
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