第83話一緒に思い出を作って行こう
◆
「わぁぁ…………っ!」
あれから一週間が経った。
速度よりも快適さを重視した為目的にこそ着くのは遅かったのだがリーシャと居れるだけで幸せである為移動に関しては何ら苦ではなかった。
馬車については前世の知識を生かしサスペンションをと思ったのだがそもそもまだこの世界はそこまで製鉄技術が優れている訳でも無く、試作品を何作品か作ってはみたもののバネが折れるか潰れるかしてしまい更に乗り心地が悪くなるという最悪の結果となった。
その為今現在は粘り気が強くて折れにくく、また反発力の高い金属を手探りで新たに作り出している段階である。
前世の知識を使ったチートといえどそれを作り出せる土台が出来ていないのだから致し方ない。
そんな事より、本日ようやっと目的地である赤沼へと到着出来た。
この赤沼なのだがこの沼の名前ではなく、この地域周辺にある無数の沼の事を赤沼と言うらしく、地域住民達のデートスポット兼観光スポットとして知られている様である。
因みに今回はこの地域を治める領主へ事前に連絡をいれてこの俺達が来ている赤沼は本日のみ貸し切りにしてもらっている。
貸し切りで申し訳なく思っていたので実際はどうなのか聞いてみた所『クロード殿下が来たと箔がつきますし、何より婚姻をする旨を発表されたお二人が来たとなれば更に観光客の増加を見込めるだけでなく、長期にわたってそれらを宣伝出来ると考えれば感謝しかございません』とのことである。
そしてリーシャは今、目の前に広がる水浮草に咲く花の鮮やかな赤色と冬を超え若葉を生い茂らせ始めた黄緑色の作り出した絵画の様な美しい光景に言葉を発する事も忘れて釘付け(その姿も可愛い)の様である。
そんな、この美しい景色に魅入っているリーシャの代わりにシャルロットが話しかけてくる。
「こんな美しい場所があったなんて知りませんでしたわ」
「そうであろう?あの日から忙しい合間を縫って王国各地について調べて来た甲斐があったと言うものである」
「流石ですクロード殿下。私もクロード殿下を見習ってよりリーシャ様の為に動けるように精進致しますわ」
「まぁ、程々にな」
そして俺はシャルロットの、リーシャに対する忠誠心の高さに若干驚きつつリーシャの元へと歩いて行く。
「この景色は想像以上に美しいな、リーシャ(特にリーシャがこの景色に加わる事により、より一層美しく見えてしまうな)」
「は、はいっ!クロード殿下っ!未だ王都から出たばかりなのですがこの一週間様々な事を見て、知る事ができましたわ」
「はは、まだ一週間であるぞ。これからこうして二人で一緒に思い出を作って行こうではないか」
そして俺とリーシャはどちらからとも丸太を半分に切っただけの簡易な椅子に座り、手を繋ぎ二人肩を寄せ合いながらこの景色を堪能するのであった。
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