第80話念のためと調べてみてくれたから間違いないんだって

しかしながらアイリーンの判決が禁固七年、しかも執行猶予という聞いた事も無い判決に一瞬アイリーンの頭がおかしくなったのではないか?と思ってしまうも、彼女の話を聞く限りどうやらクロード殿下が情けで減刑をして頂いたみたいである。それも王族へ不敬を働いている為死刑もあり得る内容を考えれば破格すぎる減刑であろう。


理由としてはアイリーンがまだ二十歳以下であり十五歳は越えてはいるもののまだ価値観や道徳心などが未熟であると判断し将来性を鑑みた場合更生する可能性も考えられる為、禁固七年。


そして更にクロード殿下は自分が王族であるという部分にさえ目を瞑れば単なる色恋の縺れでしかなく、その内容で厳罰な対応をするのは如何なものかと仰り、王国で初めてとなる執行猶予という対応をするよう命じたとのことみたいである。


そしてこの執行猶予とは書いて字の如く刑罰を執行するのに猶予を与えるという物であり、この期間中に犯罪を犯さなければその期間をもって刑罰を無効とし、その代わり期間中に犯罪を犯した場合はその犯罪の罪に更に今回の罪を加算されて罰せられえるという物らしい。


なんと、なんと甘い刑罰か。


そう思っていたのだが、俺は目の前で未だに自分が如何に被害者であるかを滾々と、まるで悲劇のヒロインのごとく話しているアイリーンを見て、むしろ彼女は何の後ろ盾も無くなり、更に今回の噂のせいで周りが警戒している為今までの様な手法が使えない状況で生きて行く事の方が牢屋で暮らすよりも、死んで一瞬の内に楽になるよりも、より長い期間を苦しむ羽目になるのでは?という考えに至り、クロード殿下の慧眼に恐れおののく。


どうやら俺はアイリーンだけではなくクロード殿下の事もその本質を見抜けていなかったようである。


「それでね、アルキネス。私、アルキネスとの赤ちゃんが今お腹の中にいるみたいなの。女性魔術師さんが念のためと調べてみてくれたから間違いないんだって」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………はい?」


そうだ。


忘れていた訳ではないが、何故この考えに至らなかったのか。


王族に不敬を働いた者はアイリーンだけではないという事に。


あんな事をしておいてお咎めが何も無いわけがない。


恐らくこれが俺が犯した罪でありクロード殿下が下した罰なのであろう。





「良かったのですか?クロード殿下」

「まぁ良いんじゃないのか?鞭は父上、飴は我という図式もできる訳であるからな」


ニーナにこれで四回目となる同じ質問を、同じ答えで返す。


どうやらニーナは俺の、アイリーンに対する対応が甘すぎるのではないかと思っており、未だ納得していないようである。

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