第79話父親とそういう行為をする
そして俺はオルガンが置いていった五つの映像保存球、その内の一つを起動する。
そこには愛を囁き合いながら俺の父親とそういう行為をするアイリーンの姿があり、俺のナニは小さいだのそもそも下手だの早いだのと言っている映像が流れ始めるのであった。
◆
一ヶ月後、俺はようやっと釈放された。
と、いうのもアイリーンの裁判が終わるまでは俺を外に出してまた新たな厄介事を持ち込んで来る事を回避する為であり、その為本来よりもかなり長く拘束される事を覚悟して欲しいという事を牢屋番から聞かされていた。
そして俺が釈放されたという事はアイリーンの裁判も終わったのであろう。
この一ヶ月間様々な事を考えていた。
親父を殺そうとも思ったし自らの犯した罪や迷惑をかけた人たちの事も考えた。
しかし父親と俺は何が違うのか?今更迷惑をかけた人達に合わせる顔がそもそもあるのかという考えに至った。
あの頃の俺は挫折という挫折などした事もなく全てが順調な人生、恋人も出来て浮かれていたのだろう。
今ならば分かる。
あの頃の俺は挫折した事が無いからこそ自分の考えに疑問を持たず、故にクロード殿下の忠告も鼻で笑い聞く耳を持たなかったのだと。
何も分かっていない大馬鹿やろうは俺の方では無いか。
釈放されたは良いがこれからどうしたものか。
アイリーンの一件で信頼はガタ落ちしてしまっているだろうし、あの親父がいる実家に帰るなどという選択肢は無い。
かと言って今更騎士団に戻れる訳もなく、冒険者か傭兵かと思っているといきなり誰かに抱きつかれる。
「だ、誰だっ!?この俺に───」
「遅いっ!私アルキネスが出てくるのずっと待ってたんだよっ!?」
抱きついて来た人物が誰かと思い確認しようとした瞬間聴き慣れた声、天真爛漫な変わらぬ愛くるしく人懐っこい表情をしたアイリーンがそこにいた。
◆
何故ここにアイリーンがいるのか意味が分からなかった俺は、アイリーンの手首を掴み痛がる彼女を無視して強引に近くの飲食店へと入り、ことの顛末を聞く。
はっきり言って彼女の言っている事はめちゃくちゃでありいかに周りの全てが悪いか、いかに自分は悪く無いかという事しか言わなかったため何故アイリーンが外に出れているのか分かる頃には天辺にあった太陽は既に沈んでいた。
それと同時に俺は思い出す。
昔のアイリーンも思い返せば何か起こる度にいかに自分が可哀そうか、いかに周りが悪いかという事しか言って無かった事を。
そしてアイリーンの事なのだが彼女は確かに懲役七年の禁固刑が妥当であるという判決があったそうな。
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