第81話【春編】能書きを垂れるウザい奴
それにアイリーンの目的がただ純粋に俺への好意の結果であり悪意を持って行っていなかったという点は俺にとって大きな分岐点であった。
ただ、何が悪いのか理解していないというのもどうかとは思うのだが、そこはまた別問題であろう。
それにあの裁判の一部始終は映像魔術により全国へと中継されていた為、アイリーンはもう自分の身体を売る事は出来ないだろう。
触らぬ神に祟り無しという奴だ。
今までみたいに悪さももう出来まい。
それにこの世界には冒険者や傭兵といったある意味身体を使った仕事もある。
それらならばアイリーンであろうとも門前払いされる事も無く日銭を稼げるであろう。
そんな事を思いながら俺やリーシャ達、そして側仕え達を乗せた馬車は春の暖かな日差しを浴びながらゴトゴトと緩やかに進んでいく。
今日この日の為に俺はリーシャの為にと暇つぶしにトランプを作って来たのだが。当のリーシャは窓の外に釘付けの様である。
決して、窓に張り付いたりせず、しっかりと席について外を眺めている辺り育ちの良さがみて取れる。
しかし、やはりそこは窓に張り付いて、なんなら窓を開けて身を乗り出したいのかソワソワとしている姿のリーシャは可愛いと言わざるを得ない。
「あっ!クロード殿下っ!あそこにコボルトの親子がいましてよっ!!わぁぁあっ、コボルトの赤ちゃん、可愛いですわねっ!」
「うんそうであるな。確かに(リーシャが)可愛いな」
そしてリーシャはコボルトの親子を見つけ、我も忘れて大はしゃぎである。
「あれだけ可愛いですとペットとかにしてみたいですわね」
「見た目は確かに二足歩行の犬の様な容姿をしているのだがあれで凶暴でかつ縄張り意識が非常に強い魔物でな、コボルト同士でも度々殺し合う程である。そして犬や狼と違い大人のコボルトは単独行動の為に懐くという事は例外を除きまずないと思って良いだろう。それこそペットにしたいのならば何世代にも渡って人の手により育て、家畜化をしなければならない………」
そして俺はそんな可愛いリーシャへコボルトについて語って行くのだが、その途中で気付いてしまう。
コレでは女性に嫌われやすい能書きを垂れるウザい奴ではないか。
否定では無く肯定してあげるべきだったと後悔する。
この場合『今は無理でも何世代と渡り人間と過ごせば凶暴なコボルトでもペットに出来る様な大人しいコボルトが生まれ始めてペットとして問題無く飼えるかもしれないね』と言うべきであったのだ。
「そうですの………他にはどんな事を知っておりますのっ!?」
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