第77話冤罪

「はい、はいっ!わたくし外の世界を見とう御座いますっっっ!!!ってあ、足がっ!足が宙を浮いておりますっクロード殿下っ!離してくださいましーっっ!!」

「はっはっはっ、そう言うリーシャも離れまいとしがみついているではないかっ!」

「ひぃぃいっ!!」


そして俺の言っている内容を理解したリーシャは満面の笑みで飛び付いてくるので抱き抱えるとその勢いのままくるくると回る。


この笑顔が見れただけでも俺の努力全てが報われた気がするのだった。





暗い地下室、蝋燭もなく小窓から見える星々と月しか見えない牢屋へと手枷をされ入れられていた。


俺が何をしたと言うのだ。


悪いのは全てあのクロード殿下であろう。


殿下と敬称をつけるのも腹立たしい。


「クソがっ!」


その怒りのまま俺は壁を力任せに殴る。


手枷をされているため殴る動作はおかしくなり、殴った手首を痛めてしまう。


クソがクソがクソがクソがクソがクソがっ!


その痛みすら腹立たしくて仕方がない。


そんな時、誰かが錆び付いた扉を開け階段を降りてくる足音が聞こえて来る。


足音からして一人であろう。


うまくいけばソイツを利用して脱走出来るかもしれない。


俺は未来の騎士団長となると男である。


その立場を利用して懐柔するもよし、何とか鉄格子に近付けさせて鍛え抜かれたこの身体で思い知らせるのも良し。


方法などいくらでもある。


悪いのは俺の評価を甘く見て一人しか見張りである牢屋番を付けさせなかったクロード殿下であろう。


俺は悪くない。


そうだ。


今回の件についてもどう考えても冤罪である。


であるならば例えここで脱走したとしても後日今回の事が冤罪であったと分かれば今回の脱走の件も無罪となろう。


いや、それだけでは無く今回のクロード殿下の悪行極まりない一連の行動をも世に知らしめる事が出来るのである。


そうと決まれば脱走する事は悪い事だなんだと悩む必要などあろう筈がないではないか。


そして脱走した後第二王子であるベルホルト殿下の元へ行き今回のクロード殿下の悪行をリークすれば、その功績をもって俺の未来も安泰であろう。


俺ながら完璧過ぎる内容に思わず笑みが溢れ、笑い出しそうになるのをグッっと堪える。


ここで笑ってしまって今から来るであろう牢屋番に勘付かれては元も子もない。


しかしながら良い案を思いついたという興奮はそう簡単に消せる物では無く、早く来い、早く来いと、まるで獲物が来るのを息を潜めて待つ地竜の如く牢屋番が来るのを待つ。

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