第76話【旅行編】リーシャのやりたい事
そして俺はリーシャの顔をそのまま俺の胸へと、その泣き顔が誰にも見られない様に当て抱きしめるのであった。
◆
「ごめんなさい、クロード殿下の衣服をわたくしは汚してしまいましたわ」
自分でも気付けないくらい溜まっていた物がリーシャの中にあったのだろう。
あれから声を押し殺して小一時間程も長い時間を泣き続けたリーシャがおずおずといった感じで俺の胸から離れていく。
その顔は熟れたリンゴよりも真っ赤なのは気付かないフリをするのだが、代わりに俺の脳内フォルダには保存しまくりである。
そして涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった俺の胸の惨状を見たリーシャは、気にしていない風を装って謝罪してくるのだが首や鎖骨どころか手の先まで真っ赤になっている所をみると恥ずかしくて仕方がないのだろう。
むしろ恥ずかしさのメーターが振り切ってしまっている為感情が追い付かず逆に理性を何とか保てているのかもしれない。
これは後で悶絶する奴であろう。
そして恥ずかしさで悶絶するリーシャもさぞ可愛いのだろう。
想像するだけでにやけそうになるのをグッと堪える。
「リーシャ様、一度お顔を拭きましょう」
「あうあう」
そして、そんなリーシャのお顔はというと当然の事ながら涙と鼻水で濡れており、シャルロットがハンカチでリーシャの確認も取らず半ば強引に拭いていき、リーシャはされるがままに拭かれていく。
そしてシャルロットと、メイド二人の側仕えによりリーシャは顔を綺麗にした後、腫れた目元を隠すように薄い化粧も施されていた。
その早業には思わず見入ってしまう程であった。
「もう大丈夫であるか」
「はい。取り乱してしまい申し訳ございません。クロード殿下」
「良い良い。リーシャが無事ならばそれで良いではないか」
そして俺は一呼吸置き、リーシャへ報告する。
「リーシャよ。あの時からもう何年も経ってしまったがようやっと我はあの時交わしたリーシャのやりたい事を叶える事ができる」
「あの時の………約束……?………ま、まさかっ!?いやでもそんな事、わたくし達の立場を考えれば不可能なのでは………っ?」
リーシャは初め、何の事なのか分かっていないようであったのだが、その約束がいつの約束であったか思い出すと目を見開き驚いた後、そんな事は出来ないと言う。
そんなリーシャの頭を強引に撫でながら俺は言う。
「此度の功績により、その褒賞として我とリーシャ二人、一年間の休日を頂いて来た。ほら。陛下のサイン付きの証拠もある。あの時のリーシャの申したやりたい事、『外の世界をみてみたい』という願いを我と一緒に叶えに行こうではないか」
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