第74話父としては

「…………成程、成程成程っ!!流石我が息子と言うべきか、それともお主のその過ぎたる才は我が身の危険となりうると考えるべきかっ!どちらにせよ今は褒めようっ!!」


そして父でもあるロードデル・フォン・ハイネス国王は俺の言葉を聞いたあと上機嫌に褒めてくる。


他人に褒められる等いつぶりであろうか。


それが実の父親ならば尚更である。


「ロードデル国王陛下が愚王とならぬ限り、我は陛下をどうこうするつもりはございません」

「うむ、それでよい。国の事を想えばこそ、その時は実の父と思わず一思いに殺ってくれてかまわぬ。それが王族であると言うのに弟であるベルホルトは自分の欲望を満たす為だけで動いておるから救いようもない。第二王子ではなく、いち父として大目に見てしまったきらいが無かったと言えば嘘になろう」


そして陛下は目を瞑り深く息を吐く。


その一瞬だけは子を想う父と国王としての立場の葛藤が垣間見えた気がした。


「とにかくこれでアルビンの時に取りこぼした我が王国の獅子身中の虫や膿は全て出し尽くせるという事であるなっ!!お主のお陰であと数年は楽が出来そうだっ!!あの時はいくら神童と言えどただの小童の戯言と思っておったのだが、良かろうっ!!そなたの望みを叶えようではないかっ!!我が息子クロード・フォン・ハイネス並びにその婚約者であるリーシャ・リプルトン・クヴィストには向こう一年間の休日を与えようではないかっ!!そしてそなたの功績に対して我の対価がその程度では他の者達に示しがつかぬ故、後日金貨並びにこの一連の騒動で主のいなくなった領地を授けようっ!!国に返すも良し、将来王位を継げなかった未来のお主の子供たちへ受け渡すも良し、好きにするがよいっ!!」

「有難き幸せでございます」


俺は金貨と領地を頂く事を了承し、上機嫌な父の前で片膝を付き首を差し出す。


ここではき違えてはいけないのが、好きにすれば良いと言われたからと言ってやりたい放題して良いという事ではないという事である。


ただ単に領主のいない領地経営が面倒くさいだけなのでは?とは思うものの、恐らく俺とリーシャの休暇を取る為にあれこれと動いてくれていたのだろう。


これくらいの事であるのならば喜んで引き受けようではないか。


そして俺は父と軽い雑談をした後に退室する。




まったく、見ないうちに大きくなりおってからに。国王としては嬉しいが父としてはちと寂しいではないか。




部屋を退室するとき、そんな父の言葉が聞こえた気がしたのであった。

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