第73話この証拠をどう使うかは陛下次第
はっきり言えばリーシャと交わしたあの日の約束の為に
それだけでは無い。
アルビンの件だってそうだ。
全てはあの日交わした約束の為である。
「初めに今回の件で我と陛下は複数のメリットがありました。デメリットがあるとすれば我があの雌猿を来たる日まで掌で転がさなければならないという面倒事位でしょうか?そのデメリットも陛下には関係ない為普段通り生活するだけで、陛下からすれば向こうから勝手にメリットがやって来るという内容でございます」
そして俺は今日この日の為に用意していた建前を言うと陛下へ目線を向けて「続きを言っても良いか?」と送ると、陛下は目線で話せと返してくる。
そもそも建前とは言うもののその内容には嘘偽りなどは無い。
「まず今まで野放しにしていた事は多くの学生の目に目撃されているでしょう。そして今日の断罪でございます。コレで我は普段は優しいが牙を向けてくる者には例え平民であろうとも関係なく全力で立ち向かう性格であるのだとあの場にいた全員に刻み付けれた事でしょう」
「ふむ」
ここで我は一旦言葉を区切りテーブルへ置かれたコーヒーを飲む。
アルビンの時は父上の圧力に気圧されそうになったものの今ではその威圧も演技であると理解している為最早そよ風程度の威圧にしか感じないのだが。
「そしてあの場で発言した『指紋』という言葉と『筆跡』という言葉をあえて言う事で今、我の暗殺を考えているであろう我が腹違いの弟であるベルホルトは、コレら二つの信憑性等が分かるまで迂闊に手は出さないでしょう」
筆跡と指紋は当人を特定する証拠の一つとなり得るのかという研究が進むにつれてその信憑性が上がって来るであろう。
それこそ研究すればするほど『証拠』として申し分ない、一つの判断基準となりえるのではないか?と。
しかし、それらが証拠として扱えると判断できるまでにはかなりの時間と日数、そして様々なサンプルが必要となる。
本当に指紋は全ての人が違うのか?、筆跡は隠そうとして文章を書いても見抜けるのか?指紋はそれが分かった所で『どのようにすればクロード殿下の様に紙等様々な物についた指紋を採取できるのか』という問題もあり、筆跡においても『どれ程の文字をどの種類書いた物がより信憑性が高いのか』という事も調べる必要があるだろう。
それこそ一日や二日で分かるようなものではない。
そして俺はこれら様々な理由を陛下に説明していく。
「更に、この『指紋』と『筆跡』は陛下が証拠としてなりうるとあの場で大々的に発表してくれました。故にベルホルトは動けないのです」
そして俺は毒の塗られたナイフと暗殺の依頼が書かれた手紙をテーブルへと出す。
「アイリーンの周りだけではなくベルホルトの周りにいる臭い奴らの動きもこれで分かりやすくなる事でしょう。あとはこの証拠をどう使うかは陛下次第でございます。このナイフと手紙の指紋と筆跡は、研究が終わった彼らの努力を示す為にも、彼らの研究結果にて炙り出すのもよろしいかと」
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