第60話これはまさしく天啓
あのいけ好かないリーシャが魔術の自習により教室を移動する際、普段は側仕え又はシャルロットへ渡している鞄を机の上に置きっぱなしにして授業をするグランドへと向かって行った光景を目撃する。
私はその光景をみて悩む事も無く即座にリーシャの机に向かうと周囲に誰もいない事を確認の上、リーシャの鞄を手に取り何事も無かった体で教室から退室する。
そして私は廊下を歩き、突き当りの角を曲がった瞬間トイレまで一気に走って行くと個室に入り鍵を閉める。
「この鞄の中にあのリーシャの弱点や何か弱みになる物が入っていれば良いんだけど」
そんな事を思いながら私はリーシャの鞄を開けると中身を覗く。
するとそこには猫の絵やピンク色した花柄等、沢山の可愛らしいデザインが施されている封筒が目に入って来る。
あの世話役糞婆の様な性格のリーシャからは想像もできない程可愛らしい封筒の数々に思わず「似合わな過ぎて気持ち悪いわね………」と声を漏らしてしまうものの、そんな事よりも封筒の中身が気になって仕方がない。
そして私は子犬の柄が描かれた封筒を手に取ると手で乱雑に破き、中に入っている手紙を取り出しその内容を読み始める。
あのリーシャがしたためた手紙であるのならば弱みの一つや二つ位書いていてもおかしくないのでは?と興奮しながら読んでいたのだが、読み進めていく内に私は口から大量の砂糖を吐き出しそうになった。
何だ?この手紙は?
読む手紙読む手紙それら全てがクロード殿下への、リーシャの秘めた思いを綴っただけの恋文であった。
これでは弱みどころか、この事が知られてしまえばリーシャの真面目一辺倒の口うるさい堅物女というイメージからくるギャップにより、リーシャの好感度が爆上がりしかねないではないか。
「チッ!ほんっと、家畜の糞よりも使えやしないっ!。もうちょっとマシな物の一つや二つくらい入れときなさいよ。公爵家の娘の癖して金貨の一枚もありゃしないじゃないっ!こんな利用価値も無いような女はクロード殿下の婚約者並びにこの国の王妃としては力不足でしかないわっ!やっぱり神様は私にこそクロード殿下の婚約者、そしてこの国の王妃として相応しいというお告げに違いなわっ!」
ここまで使えない女など、最早私にとって怖くも何とも無い。
「いや、まてよ………」
そう思いリーシャの鞄を何処に捨てれば証拠隠滅できるのだろうかと考えていたその時、私は閃いた。
これはまさしく天啓。
これこそが神のお告げと言わざるを得ない。
「このラブレター、今見たら名前を書いてないじゃない。だったら文末に私の名前を書いてクロード殿下へ渡せば良いのだわっ!!」
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