第58話まるで被害者の様に恐怖に怯える
私に愛を囁いている裏でアルキネスとも繋がっていたのであろう。
結局、アルキネスと俺はこの売女にいいように使われていたのである。
その結果が今の自分のこのザマかと、愛していた分その怒りも大きく、私の中で膨れ上がって行く。
「この尻軽女がっ!!私だけではなくアルキネスにも手を出していたのかっ!!貴様だけはっ!貴様だけは絶対に許さないっ!!貴様のせいで私はクロード殿下の側近から外される事になったんだっ!!」
そして私は今もなお膨れ上がる怒りを言葉にして叫ぶのだが、やじ馬で集まって来た生徒達は俺の事を頭のおかしな奴という目線を向け、アイリーンに至ってはまるで被害者の様に恐怖に怯える様な雰囲気を醸し出していた。
「やだっ!怖いアルキネスっ!!私、オルガンと何も無いのにっ」
「大丈夫だよ、アイリーン。そして君が俺以外の男とそういう仲になったというのがコイツの妄言である事もちゃんと分かっている。君は何一つも悪くない。悪いのは妄想と現実の区別がつかないアルガンだって事は今ここにいる人全員が思っている事である。恐らくこないだの魔術大会で負けたストレスでおかしくなったのだろう。誰かっ!俺がオルガンを抑えている間に衛兵を呼んで来てくれないかっ!?」
「…………アルキネス、いずれお前も俺と同じように後悔する時が必ず来るであろう。今からその時を楽しみにしているよ」
そして私はアルキネスへ無駄であると知りながらも忠告を含めた捨て台詞を吐き、やって来た衛兵により学園にある地下牢へと連れていかれるのであった。
◆
「全く、たかが女に浮気されただけで取り乱しおってからに」
「………クロード殿下………………………?」
地下牢に入れられてから何時間がたったであろうか。
日が昇っており、採光窓から地下牢へと太陽の光が降り注ぐ事により辺りが見渡せていたのがいつの間にか日は沈み真っ暗となっていた。
そんな中、蝋燭を手に私に話しかけてくるクロード殿下が見える。
一瞬私の強い願望が見せる幻かとも思ったのだがどうやら本物のようである。
そして幻ではないと知った私は片膝を付き頭を垂れるのだが忠誠を誓う言葉など言える筈も無く、ただ静かにクロード殿下の言葉を待つ。
「よいよい。楽な姿勢に崩して座って構わぬ。ここにいるのは我と側近のモーデルしかおらぬからな。誰も咎めはせぬわ」
そう言いながらクロード殿下はモーデルが用意した背もたれの無い木の椅子に座ると楽にせよと仰る。
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