第55話撫でるのを止める事が出来ない
そして静かになった部屋を見渡せば、そこには不安げに俺を見つめて来るリーシャの姿が目に入って来る。
本当は今すぐにでも抱きしめてあげたいのだが生憎この部屋には俺達だけではなくモーデルにシャルロット、そして学園長を始め魔術学園のお偉い方がいる為にその欲求をグッと堪えて頭を軽く撫でるだけで止める。
「わざわざアイリーンを指摘してくれてありがとう、リーシャ。」
「わっ、わたくしはクロード殿下の為に指摘したわけではございませんわっ!」
これを翻訳すると『やったっ!クロード殿下に褒められましたわっ!!』という意味であり、更に尻尾をブンブン振り回している姿が見える。
あぁ、可愛い。
可愛い過ぎてリーシャの頭を撫でるのを止める事が出来ないっ!
そしてリーシャはまるで花が咲く様に表情を綻ばせるものの、次の瞬間にはそのによによした口元を扇子で隠し、下がり気味の眉毛をほんの少しだけキリリと釣り上げて俺の為では無いと言い返す。
すると後ろでシャルロットが額を手で押さえて天を仰ぐ姿が見えた。
しかし、この天邪鬼故に頭を撫でられる度に眉が下がりそうにピクピクと動くリーシャもそれはそれで可愛いと思うので俺は一向に構わないと思う。
「んんっ!!」
そんな俺達のやり取りを、学園長の咳払いがこの幸せタイムを終了せよと遠まわしに告げて来る。
残念ではあるがリーシャから離れて、学園長へと軽く謝罪をした後ガラス張りの観戦席へと向かう。
そして俺の隣にリーシャが座るので誰にも気付かれない様にリーシャの手を握るとリーシャは一瞬びっくりする様な表情をした後、顔を真っ赤にするものの手を解く事なく握り返してくるのであった。
◆
結果から言うとオルガンは決勝戦で負けた。
むしろあの杖であそこまで行けた事を見れば、やはりオルガンはそれなりに天才であったのであろう。
しかしそれ故にオルガンは優秀故に若い頃から玄人向けの杖を使い、今ではオーダーメイドの杖を使い続けた事が裏目に出た様である。
その為オルガンは終始杖の癖に手を焼き、手探り感が全てに出ていた様に見えた。
もし杖を自由に選択できるというルールの元戦えばオルガンの圧勝であっただろう。
「ではロイド・ウォードよ、本日より其方を我の側近として向かえ入れよう」
「あ、ああっ、有り難き幸せで御座いますっ!」
そしてこの魔術大会で見事学園の頂点に上り詰めたのが、今俺の目の前で片膝を付き王国と俺に忠誠を誓っているロイド・ウォードその人である。
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