第54話ヘイトが一気に集まっている
「グラデアス王国、ひいてはクロード殿下に栄光と繁栄を」
そして俺はこの日、心の底からクロード殿下へ忠誠を誓うのであった。
◆
今日はクロード殿下の護衛を兼ねた側近を決める魔術大会の日である。
この大会に関しては一応オルガンからの強い申し出があった為実行された大会である旨は説明されている。
されているからこそクロード殿下ではなくアルキネスへと、将来騎士団の入団を目指している生徒達からのヘイトが一気に集まっている。
しかしアルキネス本人はそんなヘイトなど何とも思っていないのか俺の側近兼護衛を辞める素振りも、剣術の大会を開く素振りも見せず、相変わらずアイリーンとイチャイチャしていたりする。
「えーっ!?殿下っ!何で私は殿下と同じ部屋で観戦出来ないんですかぁーっ!?私も殿下と同じ部屋で観戦したいですぅーっ!」
「貴女、身の程を弁えなさい。クロード殿下と同じ部屋で観戦したいと申すのならばまずはそのはしたない口調から治しなさいと何回もわたくしは申しているでしょう?」
そしてアイリーンはアルキネスに腕を絡めてイチャイチャしながら我々が観戦する観戦室へとそのまま入ろうとした為入らない様に注意するも、そうするのが当然のように俺へと腕を絡めてきて上目使いで語尾を伸ばした、イライラする声で入りたいとお願いしてくる。
「アンタには言ってませーん。婚約者だかなんだか知らないけど今は殿下と私が話しているんですぅー。勝手に二人の会話に入って来ないでくださいぃーっ!でんかぁ〜、リーシャが私をいじめて来るんですぅー。助けてくださいぃー」
そのアイリーンに対してリーシャが『今の貴女では部屋に入るには相応しくない。入りたければ最低限自分を磨いて来なさい』と指摘すると、アイリーンは一瞬リーシャを睨むと反抗期の子供の様に言い返してくる。
「リーシャ様、仮にも王妃と成られるお方であるのならば権力にものを言わせて平民を押し付けようとなさるのはお辞め頂きたい」
そしてアイリーンに続けとばかりにアルキネスが俺の愛しきリーシャへと噛み付いているではないか。
この光景を見て俺は今日何度目かの頭痛がしてきた。
何というか、兎に角コイツらには何を言っても焼石に水であり『まるで宇宙人と話しているみたいだった』という表現を聞くたびに『そんな大げさな』と思ってしまった事を心の中で恥じながらアイリーンと、ついでにアルキネスも一緒に衛兵へと突き出す。
廊下の奥から「はっなっせっ!はーなーせーっ!!俺はクロード殿下の側近兼護衛だぞっ!クロード殿下から離すことを止めたまえっ!!」と聞こえてくるのだが無視で良いだろう。
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