第43話愚の骨頂
そうオルガンの耳元で囁くだけで、簡単に男を落とせるのだから容易いものである、と私はオルガンを抱きしめながら、ほそくえむ。
私はオルガンに抱かれながら、ふと思う。
あぁ、なんて簡単な人生なのだろうか。
そして何故世の女性は私と同じ方法で成り上がろうとしないのだろうか?
こんな簡単に貧しい生活から抜け出せるというのに。
内職や畑仕事、職人職等をやった所で私たち平民は一生慎ましい生活を強いられるのである。
そこに多少の差はあるものの貴族や大商人の様な裕福な暮らしなど夢物語でしかないというのに。
どうせ女性は皆、いずれは子供を作る為にそういう行為をするというのに何故皆忌避してまるで悪い事の様に言うのかが分からない。
それに子供を身ごもりたくないと言うのならば避妊薬を飲めばいい話である。
私からすればそれらは歳を喰ってやりたくても出来なくなった者、一歩踏み出す勇気が持てない者、容姿に自身が持てない者達による単なる妬み僻みやっかみであると言わざるを得ない。
なにも犯罪でもなければ罪に問われる訳でもないのに、やらない理由をあれやこれやと探し出しては自分の非は見ずに私へ誹謗中傷をする。
なんと、醜い者達であるか。
そんなんだから一生庶民、一生平民、一生貧乏なのだ。
そして、安心しきって何の努力もせずに男を奪われて文句をいう女性もそうだ。
奪われたくなければ何故奪われないように努力をしないのか?
奪われた後でその怒りをぶつけられても私からすれば自分の怠慢から目線を反らして文句を言うその姿は滑稽でしかないというのに。
クロード殿下とはまだ結婚しておらず、婚約者という立場で満足して安心しきっているリーシャなんか私からすれば愚の骨頂である。
あぁ、クロード殿下を奪われて、私の嫌いな『何もしないでただ生きているだけで裕福で明るい未来が約束された人物』その中でも富も権力も寝ているだけで手元に転がってくるあの、私がこの世で一番憎く
て大っ嫌いなリーシャが怒り狂うその様を想像するだけで私の身体を快感が走る。
そして私は気持ちの籠っていない愛を今夜も囁くのであった。
◆
アルキネスとオルガンがアイリーンの手管に落ちた。
そう判断するのに時間はかからなかった。
アルキネスとオルガンはアイリーンとの関係を隠そうとしている様であるが、あそこまで如実に態度へ出てしまっていては気付かない方がおかしいだろう。
そしてアルキネスとオルガンが滑稽なのはアイリーンが愛しているのは自分であると思い込み、近くに自分と同じ様にアイリーンと関係を持っている人物がいるという事に全く気付けていないという事である。
それ程までにアルキネスとオルガンはアイリーンを愛しており、そしてそれ程までに信頼しているのであろう。
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