第41話ホンっと、気持ち悪い

そして、そんな俺と彼女が両想いになるのにはそんなに時間はかからなかった。


初めて身体を重ね合ったあの日は、これ程の幸せな事があるのかと思った程である。


彼女も俺も初めてで、少し戸惑ったりした事もあったけど、その分一つになれた時の想いはひとしおである。


この俺の腕の中で眠っている彼女を守る為ならば俺はどんな逆境にも立ち向かうと俺はあの日誓った。


それからというもの、アイリーンはちょくちょく俺の元に来てくれた。


しかし初めはクロード殿下並びにその周りにいる、将来クロード殿下の右腕となる者達によって冷たくあしらわれてしまい、すぐさま追い返されてしまう為俺とアイリーンとが一緒に居れる時間は皆無に近かった。


その事に怒りを感じた事は今でも鮮明に覚えている。


アイリーンが平民というだけで、どうしてこうも冷たくあしらわなければいけなかったのか。


ただ彼女が平民というだけで挨拶すらする事が許されない。


近くに寄る事さえ許されない。


言葉を交わす事すら許されない。


見ることさえ許されず頭を垂れろと、何故言われ無ければならないのか。


そんな世界など間違っている。


ならば俺がアイリーンの為にこの間違っている世界を壊してやろうと本気で思った。


しかし、その必要は無かった。


アイリーンが持つ天性の人間性により自分の力で周りを少しずつ変えていき、周りもそれに応える様にアイリーンへの扱いが柔らかく変化して行っているのが目に見えて分かる。


その光景を見るたびに、それを嬉しく思う気持ちとアイリーンは俺の物だと叫びたい衝動とが俺の中で蠢いていく。


そして、アイリーンがクロード殿下を見つめるその表情を見て俺は感じた事のない胸騒ぎがするのであった。





ホンっと、気持ち悪い。



身体を許しただけで彼氏気取りとは股間と頭が直結しているんじゃなかろうか?


私とクロード殿下が話をしている時の、クロード殿下へ敵意を向けたあの表情。


馬鹿なのかと思わざるを得ない。


故に私はこれ以上アイツに関わるのはリスクが高いと判断する。


これ以上アイツに関わって、嫉妬心を御しきれなくなってしまうなど考えただけでも恐ろしい上に、腹立たしい。


それに私は今現在、次の獲物を落としている最中なのである。


あの筋肉馬鹿に邪魔されてはたまったものではない。


「どうかしたのですか?アイリーン」

「いえ、何もありません。少し考え事をしてただけですっ!」

「アイリーンが考え事など珍しい事もあるのですね」

「あー、今失礼な事を思ったでしょうっ!」

「事実を述べたまでです。それで何を考えていたのですか?」

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